第63話

 何が原因で、どこから始まったのか、いつ邂逅したのかも僕はわからないまま始まったララティーナ王女殿下とアレティアの修羅場。


「逃げるが勝ちなんよね。結局は」

 

 三時間ほど正座させられ、二人の修羅場に巻き込まれて精神を削られた僕であったが、これ以上二人の修羅場に巻き込まれるつもりはない。

 トイレと言って逃げだしてきた。

 もう話も佳境を超え、終焉を超え、なんか延長戦に入っていたような状況だったから逃げても良い段階にあっただろ。

 

 それでも……話の中心に僕がいて逃げちゃいけないような気もするが、そもそも考えて欲しいのだが僕はしっかりと、明確に二人の告白を断ったはずだ。

 強い意志でもって断固拒否したはずだ。

 なら、僕はもう関係ないと言えるのではないか?

 

 というか、言えないとおかしくない?

 なぁなぁな態度で話を先延ばしにし、女の子をキープし、修羅場を作り出しているようなちょこちょこ見る小説や漫画の主人公と僕は違う。

 僕はちゃんと断った!

 しっかりと!無理と!嫌だと!断ったはずなのである!

 無罪放免のはずだ!おかしいのは!ひどいのは僕じゃない!ララティーナ王女殿下とアレティアの方だ!


 ちゃんとガイちゃんを見習ってほしい!

 僕に好意を持ちながらも必死に押し殺し、良き隣人として付き合ってくれているんだぞ?

 自分が男だから告白なんてしたら気持ち悪がられ、もう二度と会ってくれないんじゃないかと……別に男でも可愛けりゃいける僕に対して要らない心配して自分の好意に蓋をしてくれているんだよ?


 だからこそ僕はこうしてガイちゃんの好意に付け込んで彼女を最大限利用することが出来て……あれ?やっぱり僕はちゃんとギルティーじゃない?

 まぁまぁ、罪深いことをしているのではないだろうか?

 いや、でも……あの二人の件にガイちゃんは関係ないし……うん。それに恋愛感情を利用するのも外交官の仕事。

 うちの家は代々全員美形で恋愛感情を利用して外交することもちょいちょいあったっぽいし?


「ということで僕はここにいても良いよね?」


「えっ……?あっ、はい。そうですね。ノア様は自由です。いつでも私の部屋に来てもらって構いませんよ」

 

 常に僕の手となり、足となり、これまで多くの活躍をしてくれた護剣の影。

 その構成員の一人として活躍してくれているレイの部屋へと急遽やってきた僕は彼女の部屋のベッドで寝っ転がっていた。


「それで?一体何の用でしょうか?」


「んー、そろそろ対アンノウンの作戦準備が終わることかなって思って。後、レイに会いたくなったから」

 

 僕はレイの言葉にそう答えた。

 

 

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