第64話

 アンノウン。

 それはかつて、人類を滅ぼさんと暴れた魔王の血肉を利用して不老の薬を作り出し、それを利用して数百、数千単位で生を謳歌する化け物のような人間たちが頂点に立つ一つの裏組織である。

 

 不老となる十三人の英傑たちによって運営されるアンノウンの活動方針に決まりはない。

 十三人が各々の部下を使い、自分たちの好きなことをしているのがアンノウンたちであり、唯一のルールが互いの邪魔をしないことである。

 一致団結することがほとんどないと言えるアンノウンを一網打尽にするのはかなり難しい。


「さて、レイちゃん」


 では、どうすれば良いだろうか?

 

「はっ」


「サクッと魔王の血肉を貰っちゃおうか」

 

 簡単な話である。

 アンノウンを無理やり一致団結してしまえば良いのであろう。

 彼ら、彼女らの取れる手段が多すぎて追い詰められないと言うのであれば、その手数を削ぎ落していけば良いだけである。

 魔王の血肉を僕たちが盗めばアンノウンも一致団結して動かざるを得なくなるだろう。

 

「……本当にやるんですか?」


 僕の隣で少しばかり不安そうな表情を浮かべているレイが僕に疑問の声を投げかける。


「当然だよ」


「せ、せめて夜の方が……」

 

 アンノウンの最重要拠点にして、幹部も二人在中しているアンノウン最大のアジト。

 そこに襲撃を仕掛ける僕とレイは天上で輝く太陽の下にいた。


「どうせ夜でも昼でも変わらん。サクッと終わらせるよ。僕を信じられない?」

 

 僕は異空間から黄金の剣を引き抜く。


「そのセリフは卑怯ですよ。私がノア様を信じられないなんて告げられるわけがないでしょう?私はノア様にどこまでもついていきますよ」


「ふっ。それで良いんだよ……じゃあ、行くよ」


「はい」

 

 僕の言葉にレイが頷く。

 それを見て僕は体内の魔力を開放する。

 普段は僕の瞳を隠している前髪が逆立ったことで視界が開けた僕は無意識のうちに口元の笑みを深める。


「ぶっとべ」

 

 黄金の剣に大量の魔力を込めた僕は絶海の孤島、深い深い森の中に隠されるアンノウンのアジトへと魔力の濁流を叩き込み、すべてを破壊しつくした。


「……え?」

 

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