第61話
どれくらいの時間をガイちゃんと抱き合い、ゴロゴロしていただろうか?
平和な時間にはいつしか終わりが来るものだ……永遠の平和などありやしない。人間とは誰かを自分の下に置き、優越感を得なければ生きていけない醜い獣の名なのだから。
だがしかし、それでも人間を愛し、平和を維持しようと努力しようとする者こそが真に上に立つ人間になれるのだ。
「ふふふ……これはどういうこと?」
「ふふふ……これは一体どういうことですか?」
そういう意味で僕は上に立つ者としてはふさわしくないだろう……こうして平和とは対極的な厄災を振りまいているのだから……。
「ふふふ。実にくだらないことで黄昏ていないで私の質問に答えて?」
「質問……?君はいつから目が不自由になったんだい?」
胸にガイちゃんを抱いて温かい陽の下で草原に寝っ転がっている……実に見たままではないだろうか。
「ふふふ……その言葉をそっくりそのままお返してあげようか?」
僕の視界が捕らえているのは絶対零度のような視線で僕を見下ろし、魔王なんかよりもよっぽど悪の波動を放っているララティーナ王女殿下とアレティアである。
今すぐにでもガイちゃんを殺し、そのままの勢いで僕を監禁してやるぜ!って感じの二人がいる。
「ふん」
僕は自分の眼球に指を突っ込み、自分の視界を潰す。
「残念だ。今、僕の目がなくなってしまった」
僕の両目からは血が溢れ、視界は暗く閉ざされてしまった。
これで視界だけは救われた。
「何をしているの!?」
「大丈夫ですか!?」
「はぁー」
突然の僕の行いにガイちゃんとララティーナ王女殿下は僕を心配してくれるが、アレティアはため息を一つ吐くだけで終わる。
「さっさと魔法で治して?そんなくだらないことで同情を誘って話を強制終了させても無駄だよ?」
「……お前、やりにくいんだけど。素直に僕の心配して?」
「する必要がどこにあるの?あなたが今更両目を己の手でつぶしたところで驚かないわよ?日常的に魔力暴走を引き起こしている狂人が」
「……ぐぅ」
僕はなんとかぐぅの音を絞りだすことしか出来なかった。
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