第60話

 僕のことを引きずってでもララティーナ王女殿下並びにアレティアの元へと連れて行こうとした悪魔のようなガイちゃんの無効化は非常に簡単だった。


「ガイちゃんの抱き心地良いな」


「あわわ……」

 

 ガイちゃんのことを抱きしめ、そのまま抱き枕として一緒に寝っ転がってしまえばガイちゃんは一切の抵抗を止め、大人しく僕にされるがままの状態になってくれていた。

 身長の低いガイちゃんは高身長と言えるくらいには高い身長を持っている僕にとって己の胸にとても抱きやすい。


「そ、その……きもちわる」


「気持ちいねぇ。ガイちゃん」


「……ッ!?」

 

「太陽の光……太陽の光は確実に人間の心を健やかにする能力を持っていると思うんだよね。僕は」


「そ、そ、そうですよね……うん。はい」


「ん?どうした?」


「い、いや……何でもないです」


「それなら良いけど……」


「……私は男……あれも生えているし、女の子ほどかわいくない。好きな男とこうして一緒の時間を過ごせるだけ幸せ。だから、欲張ったりなんてしちゃだめ。どうせ気持ち悪がられるだけなのだがら……私がするべきなのはこのままノアに自分の必要性をアピールし続けて変わらず今まで通りの関係を維持してもらうだけを考えれば良いの。それ以上はダメ……ダメなの」


 小さな声で何かをつぶやき続けるガイちゃんを疑問に思いつつも、別に僕にとって重要なことでもないだろうから、別に魔法を使ってまで聞き耳を立てる必要はないだろう。

 

 ガイちゃんが何を考えているのかはわからないけど……ここでガイちゃんの問題まで抱えたくない。

 当人の問題は当人で解決してほしい……何について話しているのかはわかんないけど。


「ふー」

  

 僕はガイちゃんを胸にゴロゴロしながら太陽をぼーっと眺め、自分の眼球を陽の光で焼くという珍妙な行為を勤しみながら頭を適当に動かす。

 あの二人どうしようかなぁ……どうせしばらく経てば二人はこの場所に来るでしょ。

 どう収めれば……というか、そもそもの話あの二人の修羅場とか人類に止められるような代物なのだろうか?

 神による奇跡が必要なのではないか?あぁ……八百万の神よ。誰でも良いから助けて!

 

 うぅ……勝手に二人が僕に惚れただけなのになんで僕が悩まなきゃいけないんだ。

 ただちょっと助けられただけで恋に落ちているんじゃねぇよ、ゲーム以上の愛の深さを見せてくるなよ、どんなチョロインだよ。

 ララティーナ王女殿下。

 そして、アレティアに至っては謎だよ!一体僕のどこに惚れる要素があるというのだ!

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