第47話
暗くじめじめとした洞窟の中を僕とガイちゃんは歩く。
「……服がぐちゃぐちゃになっちゃった」
「……それはごめんじゃん」
僕たちが襲撃した盗賊アジトは既に壊滅していた。
まぁ、幼少期から鍛えられている高貴な身分の生まれである僕とガイちゃんにただのごろつきが勝てるわけないのだ。
「皆殺しにしちゃったけどこれで良かったの?」
「あぁ。別に良いんだよ。僕は盗賊に用はないからね」
「え?……盗賊に用はないならなんでこんなところに来たの?」
「あぁ……そ」
僕がガイちゃんの言葉に答えようとしたタイミングで洞窟の壁が崩壊する。
「何ッ!?」
「ふんッ!!!」
洞窟の壁を壊し、僕の方へと急接近してきた黒い影の突進を僕は手に持っていた剣で受け止める。
「なァッ!!!」
そして、魔力を開放。
僕の踏ん張りが洞窟をの壁を、天井を、床を崩壊させ……。
「せい!」
突進してきた黒い影の力を受け流し、その勢いのまま黒い影を上へと吹き飛ばした僕の一振りで洞窟があった山の一部を陥没させる。
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!」
自分が立っていた地面が崩壊し、落ちていくガイちゃんは大きな悲鳴を上げる。
「ふんっ」
ガイちゃんの悲鳴を聞きながら僕は剣を一振り。
たった一振りで降り注ぐ土や石、木々を塵へと変えた僕は随分とさっぱりした大地に降り立つ。
暗くじめじめとした洞窟は何処へやら。
僕は明るく温かい太陽の下に立つ。
「ひぇぇぇぇぇぇええええええええええ」
「さっきの質問の答えだ」
僕は自分の一振りの勢いに耐え切れず、塵となって消えてしまった剣の代わりにリューエスの宝物庫から奪ってきた黄金の輝きを持つ特殊な鋼で作られた刀を異空間から取り出して柄を握る。
「我の目的はここに囚われていたあれよ」
僕が一度上空に打ち上げた黒い影は音も気配もなく地面へと降り立ち、僕へと向き合っている。
「え……?なにあれ」
「どこかの阿呆が作り出した愚物、出来損ないだとも」
僕はゆっくりと黒い影の方へと近づいていく。
「だが、所詮人間が作りし物などどれも愚物に過ぎん。愚物をどううまく使ってやるか。それが我の職務よ」
黒い影は見えない足で踏み込んだのか、地面を陥没させ、僕の方へと距離を詰めてくる。
「落ち着け、愚物。我が有効活用してやる故……大人しく我に調伏されよ」
再度行われた黒い影の突進を刀で受け止めた僕は笑みを浮かべ、口を開いた。
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