第38話 


「貴様ッ!!!」


 地面に叩きつけられ、手袋を落とされた名も知らないドラゴンを使役している少女はぶち切れ、ドラゴンを操って空高く浮かび上がってくる。


「少しの不意打ち程度で図に乗るなよ!貴様の決闘、受けて立ってやろうじゃないか!」


 頭に血が上っている様子の少女は僕に強い殺気をぶつけ、手に持っている剣を僕の方へと向ける。


「頭が高いぞ?」

 

 そんな少女に対して僕は何もせずにただ口を開く。


「何をッ!」


「ガルル……」

 

 僕の言葉は少女には響かないが、危機感知能力と知能に秀でるドラゴンには響く。

 天空の王と評されるほどの魔物であるドラゴンだが、自分より強き者を敏感に反応し、強者からは全力で逃げ出す臆病さを兼ね備えている魔物だ。

 むやみやたらに知性なく人間に飛び掛かることのない知的な魔物がドラゴンなのである。


「え?ちょっ……どうしたの?」

 

 そんなドラゴンは僕と言う絶対的な上位者との力の差をこれ以上ないまでに感じ取ったのだろう。

 ドラゴンは少女を背に乗せたまま素直に僕の言葉に従って大人しく地面へと降り立つ。


「な、なんで!?ど、どうしたの……急に」


「くくく。このとかげは存外言葉がわかるではないか」

 

 地面に降り立たドラゴンの目と鼻の先にまで高度を下げた僕は口を開く。


「りゅ、竜をとかげだと!?」


「グルル……」

 

 僕の言葉に少女は激高するが、その反面ドラゴンは僕に委縮し続ける。


「くくく……汝はそこのとかげにも劣る知性だと見える」


「シッ!」

 

 少女は僕へと剣を振り下ろす。

 彼女の手に握られている剣から閃光が轟き、僕へと襲い掛かる。


「ん?光るだけか?」

 

 僕へと当たった閃光はたがしかし、僕の皮膚どころか魔力によって強化された制服すらも斬ることが出来ない。


「その魔法はこう使うのだよ」

 

 僕は土魔法を駆使して作り出した剣を構え、少女が使ったのとまったく同じ魔法を使う。


「ガァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 僕による剣の振り下ろしから飛ばされる閃光はドラゴンの翼を両断し、そのまま闘技場の床を両断し、深い溝を生み出す。


「……ぁ」


「壁にはぶつけぬ方が良いだろう。わざわざ無辜の民を殺す理由もない」

 

 圧倒的な力の差を見せつけられ、呆然としている少女を横目に僕は呟き、剣をサクッと魔法の炎で燃やし尽くした。

 

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