第28話
「攻めにくいところよね、ここ。標高の高い位置にあり、すべての街が一つの要塞として機能し、しっかりと各街ごとが連携出来るように永世中立国として例え他国に攻められようとも自国のみで敵国を叩きのめすという強い意志を感じるわ」
「ここにまで後退させられるつもりはないから知ったことではないね」
「万が一ということもあるじゃない?」
「君と僕がいて万が一が起こるとも?」
「まぁ、それもそうね」
僕とアーテは物騒な会話をしながらレース小国内を特に目的もなく自由気ままに歩く。
「あっ。あれがこの国の名物である重装長槍部隊の訓練の様子よ」
僕の隣で町を歩いていたアーテが広い広場かなり長い槍を自由自在に操る重装備の男たちが大きな声で掛け声を上げながら一糸乱れぬ動きで訓練している様子を指さして口を開く。
「それが名物で良いの……?」
兵士の訓練が名物の国ってどうなんだろうか?
「まぁ、ここは傭兵業で成り立っているような国だし良いじゃない?」
「あぁ……そういえばそうだったか」
「常備軍を持っていると傭兵のことをうっかり忘れちゃいがちよね。こういっちゃなんだけど私たちのような大国が他国に戦争をふっかけるときは基本的に蹂躙。敵の情報なんて必要ないもんね」
「そうだよね。というか、戦争なんて始まる前に勝敗のほとんどが決まっているしね……というか傭兵なのにあんな重装備で良いの?移動しずらくない?」
「さぁ……?そこは魔法でなんとかするんじゃないかしら?別に私も興味ないから詳しいことはわからないわ」
「魔法ってほんと便利だよなぁ……」
「そうね装備を物理的に小さくしたり、異空間に収納したり、色々な方法があるものね」
この世界だと兵站は大体魔法で何とかなってしまう。
異世界の戦争は現実世界との差が結構存在しており、前世の価値観とのすり合わせにはかなり苦労した。
「息巻いてノイを引き連れて街を出たは良いけど、この国名物が少なすぎて出来ることがないわね」
「まぁ、良いよ。こうしてのんびり歩いているだけでも楽しいから良いよ」
「……え、えぇ!友達とこうして街を歩くのもいいものね!」
僕とアーテは特に何かすることもなく夕方まで街をぶらぶらと歩き続けたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます