第29話

 世界剣魔学園には世界中から集まった数多くの生徒が在籍しており、全員が授業に真面目に取り組み、自分を研鑽している。


「ふわぁ……」


「こんなことをやるのね」


 そんな中、僕とアーテは実に気の抜けた雰囲気で授業に取り組んでいた。

 今やっているのは数学の授業である。

 高等教育まで受けていた理系学生である僕はこの世界の数学であれば問題なく理解出来る。


「へぇ。わざわざこんな面倒なやり方で答えを求めるのね」


 授業を受けているアーテが僕の隣でそんなことを宣う。


「……君がどんな公式を使っているのかなんとなく察しがつくけど、そこそこ大きな声でそんなこと言わないほうが良いよ?クラスメートたちが何やアイツと言ったような視線を向けてきているから」


 クラスメート同士の自己紹介は昨日のうちに済ませたらしい。

 昨日休んだ僕とアーテは当然自己紹介なんてしておらず、周りのクラスメートたちから既に一歩、浮いている。

 そんな最中でアーテが真面目に勉強する人たちを煽るような発言をしているものだだから、クラスメートたちの僕たち二人を見る目はなんかもう凄い。


「別に私は君がいるだけで十分よ?」


「世間体を少しは気にしよ?」

 

 王侯貴族なんて見栄で生きているようなものだ。

 しっかりと世間体には気を使って欲しいものである。


「まぁ、良いわ。ほんの少しは気にすることにしましょう」


「あー、はいはい。これは気にしないやつだ」


「アーテ!」

 

 僕とアーテが二人で会話していたところ、先生がアーテの名前を呼ぶ。


「そんなに余裕そうならこれを問いてみろ!」

 

 先生は黒板に書いた今やっている内容の応用の計算問題を出し、答えを問う。


「……13」

 

 少しだけ考えた後、アーテが答えを答える。


「……途中式は?」

 

 その答えに対して先生がアーテに問う。


「え?これくらいの計算は暗算で出来るでしょう?」

 

 アーテの答えのは実に単純明快。


「は?」


「ノイ」

 

 アーテは僕の名前を呼び、先程先生がアーテに出した問題と同じレベルの問題を出してくる。


「暗算でお願いね」


「あんまりこういうの好きじゃないんだが……えっと、25かな?」


「正解。ね?出来るでしょ?」

 

 アーテは満面の笑みを浮かべながら、先生へと声をかけた。

 ……世間体は何処?全力で先生に喧嘩売るじゃん。

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