第24話
ラインハルト公爵家領に存在する護剣の影のアジト。
「ふんすふんす」
「んっ……ぁ。く、くすぐったいです」
そこの大きなソファが置いてある一室で僕はレイに抱き着き、彼女の匂いを堪能していた。
コンコンッ
そんな最中、僕たちのいる部屋の扉がノックされる。
「入れ」
「失礼します」
部屋の扉が開かれ、両手に大量の書類を抱えた一人の女性が入ってくる。
「集め終わったか?リン」
部屋の中へと入ってきた彼女の名前はリン。
このアジトの統括を勤めている人である。
「はい。ご命令通りに。これらの書類がこの領地における行商人の行き来とすべての村の様子と徴税人についてに加えて、犯罪組織、盗賊たちの推移を示す書類となります」
「んっ。ありがと」
僕はリンに感謝の言葉を告げ、書類へと視線を走らせる。
「……」
しばらくの間、ただただ僕が書類をめくる音だけがこの部屋に響き続ける。
収入に見合っていない暮らしぶりの村……行商人の発展も、徴税人の生活ぶりにも変化なし。
……まずはここ。
んで、ここをブラフとして他に手がかかっていそうなのは……ここらへんの村の真ん中にある森とか怪しいか……。
他には……。
「んっ……地図」
「はっ。ここに」
僕はリンに命令を下し、テーブルに地図を広げさせる。
「ここの村について徹底的に調べ上げて。あと、ここら辺とここら辺も。それと、作戦実施時は僕へ連絡。実行時も逐次連携をとるから」
「承知いたしました」
僕の言葉にリンは何も言わずに頷き、僕の命令を実行するため、自分の部下たちに
「よろしく頼んだよ」
護剣の影の面々の王侯貴族への忠誠心は狂気の域にある。
彼ら、彼女らは僕の命令であればどんな不可解なことであっても素直に頷き、実行してくれることだろう。
本来僕が知らないはずの原作知識をこれっぽちも隠さず命令を下し、好き放題出来るのは実に楽で素晴らしい。
まぁ、今回の命令は原作知識はあんまり関係ないんだけど。
「さぁて、ちゃんと追い詰められると良いんだけど……」
この世界の元であるゲーム『スタフティ』は主人公が学園に入学するところから始まる第一部と魔王に率いられた魔王軍が人類社会に侵攻してくるところから始まる第二部に分けられる。
僕が今から相手にするのはそんな『スタフティ』に登場する人類最大の犯罪組織であり、第一部のラスボスを務める組織『アンノウン』である。
未だゲームの本編が始まってもいないような時間軸で戦っていいような相手ではないが……このまま何もせず傍観しているわけにもいかない。
僕はこれからの激闘を予想し、体を震わせた。
「……ふふふ。ノア様が楽しそうで何よりです」
楽しそう?
そんなわけあるか、僕は戦いとは無縁の生活を平和な国で営んでいた高校生、赤城蓮夜だぞ?
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