第23話

 自領の方に戻ってきた僕はサリアに忙しくなると言った手前、ずっとぐーたらしているわけにも行かず、行動を始めていた。


「うーむ。特にめぼしいものはないかなぁ」

 

 うちの騎士たちが荒らしに荒らしまくり、犯罪者の多くを一斉に検挙した犯罪組織のアジトがあった場所の残骸へと訪れた僕は現場に残されているものやら書類やらを漁っていた。


「……もうちょっと書類に配慮してくれても良いと思うんだけど」

 

 騎士たちは火の魔法をアホみたいに使ったのか、ただの炭となってしまった書類の残骸やら切れ端やらに修復の魔法をかけて書類を元通りにして集めていく。


「まぁ、あまり使えそうな情報はなさそうなんだけど」

 

 書類の内容を流し読みする僕は素直な感想を漏らす。

 僕ではこの書類に書かれている内容を有効活用出来る気がしないが……集めないよりは集めた方が良いだろう。

 何かに使えるかもしれないし。


「うし。こんなとこか」

 

 拾えるだけのすべてを拾い、手いっぱいにものを抱えた僕は家の方に戻ろうと視線を変える。


「持ちます!ノア様ッ!」


 そんな僕に向けられる一人の少女の声。


「……」

 

 一人でここに来ていたはずの僕のそばにいつの間にかレイが立っていた。

 彼女はニコニコとを笑みを浮かべ、頬を赤く染め上げ、瞳を輝かせている。


「い、いつからそこに?」


「少し前です!」

 

 元気に答えるレイ……少し前?え?どれくらい前かはわからないけど、少なくとも僕が探しているところを少しは見ているはず、だよね?

 ぜ、全然気づかなかったんだけど?


「どうなさいましたか?」


「いや、うん。何でも無いよ。じゃあ、持ってもらおうか」


「はい」

 

 僕はレイに持っていたものの大半を預け、自分は片手に持てる程度の書類を手に残す。


「全部持てます!」

 

 レイは僕より年上で体も大きいが、彼女はまだ子供。

 僕の渡した大部分で僕と同じように腕いっぱいになっているが、それでもまだ持てると僕に申告してくる。


「これらは駄目。僕が持つから……にしても随分と早くにこっちの方に来たんだね。もうちょい時間がかかると思っていたよ」


「ガレッドさんの尽力のおかげです」


「なるほどね。やはりあの人は使えるな……さて、と。さっさと家の方のに帰る予定だったけど、君が来たのなら予定変更。この街にある護剣の影の方のアジトの方に向かおうか。道案内は任せたよ?レイ」


「はい!任せてください!」


 気合十分と言った様子で歩き始めるレイ。

 護剣の影のアジトの場所をこれっぽちも把握していない僕は偉そうにしながら彼女の後を追って歩き出した。

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