第22話

「はぁー」

 

 なんでこんなことになってしまったんだ。

 そんなことを考えながら僕はラインハルト公爵家領に存在する公爵邸の自分の部屋で深々とため息を吐く。

 ララティーナ王女殿下から婚約の話を持ち出された後、僕はそそくさと自分が連れてきた手合とともに領地へと帰ったのだ。


「お疲れさまです」


 自室でベッドで横になる僕。

 その枕としてベッドの上に正座しているサリアが労いの言葉をかけてくる。


 僕は王都へと超特急で向かったため、メイドや執事などの戦力にならず足手まといになるような人間は誰も連れて行っていない。

 それ故に彼女は王都に来ていなかった。

 僕は領地に帰ってくるとすぐにサリアを自室に呼びつけたのだ。


「うむ」


 僕は出来るだけ偉そうに頷いておく。

 ここでの僕は王様のような態度で威張っている……あまり情けない姿を見せるものではないだろう。


「……忌々しい」

 

 僕は眉を顰め、言葉を吐き捨てる。

 女から逃げかえってきたと言うのはあまりにもダサいだろう。


「想像以上の面倒事に巻き込まれた」

 

 なので、僕は予想外の事態に対処するため、領地へと戻ってきたという体裁をとることにした。


「敵が想像以上に強大であったのだ。面倒この上ない」


 幸いなことに僕はララティーナ王女殿下をさらった組織に心当たりがあった。

 というか、王女をさらうことが出来る力を持っているのも、その動機があるのもとある組織しか思い浮かばない。


「……はぁー」

 

 もし、あの組織が関わっているのだとしたら解決するのは困難だろう。

 というか、ゲームではララティーナ王女誘拐事件なんて起こっていなかったはずだけど……なんであんな事件が起こっているんだ。

 何が起こっているのかもちゃんと調べないとな。


「これから忙しくなるだろう」


「ノア様が動く必要があるのですか?」


「ある。というか、解決出来るのが僕くらいだろう。一応父上の許可をもらい、騎士たちによる裏組織一斉捜査の許可を出したが……もう逃げ出しているだろうしな」


「ッ!?街の封鎖を実行していたのではなかったのですか」


「していた。だが、あんなもので打つ手がなくなるような手合ならそもそも王女の誘拐なんてこと出来やしない」


「確かにそうですね」


「これより僕独自に動き、色々と調査しなければならないだろうな。此度の事件が我が領内で発覚していた以上」


「ッ!?ど、独自に……?そ、その内容は私に伝えていいもので……」


「問題ないな。別にメイド一人の言葉など戯言として処理することなど容易い。それに、そもそも我はお主を信用しているしな」

 

 どう考えても一介のメイド風情が聞いていいような内容じゃないものを口走った僕に対して驚愕するメイドに対して僕はそう口にした。

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