第16話
フェルジャンヌ王国を巣喰らう闇の奥底。
「こすりすりすり」
「あっ……ちょっ、その……だ、ダメですッ!」
「良いではないか、良いではないか」
僕は自分の膝の上に乗せている少女の顔に自身の顔を擦りつけ、自分の近くにいる推しを堪能する。
「……その、実に微笑ましい光景ではあるがしばしこちらへと意識を向けてくれないだろうか?」
かつてはフェルジャンヌ王国の王侯貴族の裏の手足として暗躍し、影から王国を支えた立役者たち『護剣の影』。
フェルジャンヌ王国にとって欠かせない彼らなのだが、今から二百年ほど前。
当時の国王陛下の暗殺から始まった他国さえも巻き込む血みどろの王位戦の結果、護剣の影を知る者が全員死に、護剣の影自体も構成員を多く減らし思うように動けなかったこともあって護剣の影の存在はフェルジャンヌ王国の人間から忘れ去れることになる。
それでも、決して腐ることのなかった誇り高き護剣の影はフェルジャンヌ王国のため、人知れずフェルジャンヌ王国を守り続けてきたのである。
誰からの支配も受けない誇り高き影の組織……それを僕の下につかせることが出来れば絶大な恩恵を得ることが出来るだろう。
「なんだい?」
地下にある護剣の影の本拠地。
その一室に置かれた椅子の上に座っている僕は自分の目の前に座る2mを超える巨体を持つスキンヘッドの黒人の男、ガレッド。
護剣の影の長であるガレッドへと僕は視線を移し、口を開く。
「……何故、我々のことを?」
「我は君たちの主人たる高貴な血族の一人だぞ?そこまで不思議かね?」
「不思議に決まっている。我らの存在は、長年忘れられていたのだから」
「くくく……曲がりなりにも君たちの主人たる我に対してそんな堂々と口を開くかい?普通。まぁ、良い。我は寛大であるからな。特別に答えてやろう」
僕は誰よりも偉そうに、不遜な態度で口を開く。
「少し歴史を見ればわかることだが、この国にはラッキーが多すぎる。偶然とは考えられない幸運が積み重なり、フェルジャンヌ王国は大国へと登り詰め、その地位を維持していた。どう考えてもあり得ない、君たちのような存在がいなくてはな。君たちのような存在がいることを早々に気づいた僕は情報を集め、君たちへとたどり着いた」
まぁ、前世の知識で知っていただけだけど……それを表に出す必要はない。
「な、なんと気づいた、というのか?自力で……我らに」
「あぁ、そうだ。君たちの献身は決して無駄ではなかった。君たちの思い、努力は確かにこの我へと届いた。君たちに意味はあったのだ」
「……ッ!」
「喜べ、王国一の功労者よ。これからは我が頂点に立ち、その道を見届けてやろう」
普通の人間であれば受け入れないこの提案。
「と、当然にございます……我らは貴方方の影ですからッ!」
だが、彼らであれば受け入れることを前世の知識を持つ僕は知っていた。
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