第15話
ノア・ラインハルト。
かつては神童と呼ばれ、神がかり的な能力を発揮していた少年は才能に溺れ、女に溺れ、横暴に振る舞い、いつしか悪童と呼ばれるようになっていた。
権力にものを言わせてありとあらゆる我儘を押し通していたノアは、絶大な才能を鈍らせていたその少年は、天才と呼ばれ、いつしか勇者と呼ばれるようになる平民の手によって断罪された。
だが、ノア・ラインハルトの物語はそれで終わらない。
彼の才能は錆びついてなどいなかった……ただ、隠していただけだった。
10歳の頃、命を狙われていたところをとある少女に助けられ、表舞台に出ることどころか母国から忘れられてもなお母国のために戦い続けていた組織へと身を投じていただけだった。
「やぁ……大丈夫?」
二年後。
僕を助けることになる少女へと手を伸ばす。
「……ぇ?」
裏路地を進んでいった僕が立ち止まった場所。
そこにはぼろ布を纏っただけの少女が寝ころんでいた。
「助けてあげようか?」
「……だ、誰?」
体は横たわらせていた彼女
こちらへと見せるその顔の皮膚は爛れ、溶けているように見えた。
「まぁ、助けてあげようか?とは言ったけど、これは強制。強引にでも助けるんだけどね?」
僕は自分の体よりも大きいその少女を優しく抱き上げる。
「あっ……ダメ、私に触ったら……」
僕に抱きかかえられた少女は僅かながらの抵抗を僕へと見せるが、それを僕は押さえつける。
「大丈夫、大丈夫だから」
そして、少女の額に手を当て、自分の魔力を流し込んでいく。
「あっ……。あたたか、い」
「それなら良かった……大丈夫だよ。君には僕がいるからね」
ノア・ラインハルトは悪役である。
王都を燃やし、王城を破壊し、国王陛下を殺したボス役だ。
「安心していいよ。君は、僕が守るから」
だが、僕は……ゲーム『スタフティ』を全クリした経験を持つ赤城蓮夜は己が悪へと落ちぬと誓おう。
我が為。我が欲望のままに……我を守ろうではないか。
ノア・ラインハルトを救ったこの子は僕の推しキャラだったのだ。
自分の推しキャラを守ろうとしないオタクなどいるだろうか……いや、いない。
僕は想起する。
ノア・ラインハルトの膝の上で血を流し、瞳を閉じていたこの子の姿を。
「なぁ、見ているのだろう?名を忘れられし諸君」
少女を優しく抱きかかる僕は視線を後方へと向け、口を開く。
「合言葉だ。影は我らの為に。公爵閣下のお帰りだぞ?諸君」
さぁ、王都に来た目的を果たそうではないか。
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