第14話

 一緒に様々なものを食料を買い、街を歩きながら買ったものを食べる僕とララ。

 

「うーん。料理人が作る繊細な料理も美味しいけど、やっぱり大量の調味料をつけた味の濃い市井の食べ物も美味しいね」

 

「うん。そうだね……魔法様々だよ、ほんと」

 

 この世界には奇跡を体現する魔法が存在する。

 魔法のおかげで農地に楽々栄養を与えられるし、冷凍輸送も簡単。

 この世界の食糧事情は地球と比べても異世界の方が良いくらいだった。科学は魔法に敗北したのだ。


「あっ、私。クレープ食べたい。今、市井で流行っているんだよね?」


「そうなん?うちの領地じゃ流行っていなかったけど……流行っているのであればせっかくだし、食べようか」

 

 異世界にもクレープがあるのかという驚きを感じながら、僕はララと共にクレープを屋台で購入する。


「うーん!やっぱり甘いものは美味しいね!」


「同意……疲れた脳に染みわたるね」


「ねね。のーくん」


「ん?」


「はい、あーん」

 

 ララは自分の手に持った食べかけのクレープを僕の方へと向けてくる。


「……ん?」

 

 僕は彼女がしたいことを理解しながらも首を傾げ、わからないと言った様子を見せる。


「むぅ!ほら!食べさし合いっこ!私の分も食べて!」


「あ、あぁ……なるほどね。じゃあ、はい」

 

 僕はララの手に握られているクレープを左手で奪い取り、代わりに僕のクレープをララへと手渡す。


「もう!そういうことじゃないの!」


「食べないの?」

 

 僕は何も知りませんよ?と言ったような表情を浮かべて彼女に応戦する。

 ちなみに既に僕はもうララのクレープを一口頂いている……こっちも美味しいな。


「もう!……む、むむ」

 

 ララは自分の手にある僕のクレープを見てぴたりと動きとめる。


「ん?どうしたん?」


 僕は固まった彼女を見て首をかしげる。


「な、なんでもないわ!……え、えい!」

 

 ララは僕のクレープへと口をつけ、もしゃもしゃ食べ始める……ん?一口じゃないの?

 無我夢中でむしゃむしゃと食べ始めたララを前に今度は僕が固まる。


「……ん?」

 

 そんな僕は何かを感じ取り、ただでさえ固まっていた僕の体が更に固まる。


「……ん?どうしたの?」

 

 不穏な様子の僕を見てララが首をかしげて、僕の方に視線を向けてくる。


「いや……これは」


 確信。

 ゲーム知識もあり、ノア・ラインハルトの辿る未来を知る僕は今ここで動くべきだという確信があった。


「ごめん。急用が出来た。あとはよろしく」

 

 僕は視線を一度、監視している男たちの方へと向け、僕の手にあるクレープをララへと押し付ける。


「あっ!ちょっと!」


「ごめん!でも、外せないんだ!」

 

 僕は抗議の声を上げるララに対して謝罪の言葉を口にした後、王都の裏路地へと入っていた

 

 

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