第13話

 ララティーナ・フォン・フェルジャンヌ。

 彼女はゲーム『スタフティ』に出てくるメインヒロインであり、クールで真面目な王女様。


 主人公陣営と関わらずに生きていく……そう決めた僕にとって彼女と接するのは本来喜ばしいものではないのだが、彼女はメインヒロインだし、恋愛フラグなんてゲームの主人公様としか立たないと思っていたし、まだゲームの本編が始まるまで時間がある。

 この段階である程度の交流を持ったとしてもおいおい疎遠になれば問題ないと考えたいのだが……僕とララの間に恋愛フラグが立てばそうとも言ってられなくなる気がする。


 主人公たち陣営と関わることなく、色々な女の子に手を出して好きに生きていくという僕の目的……まさか記憶を思い出してから一週間も経たずして崩壊の危機を迎えている……?

 嘘やろ?

 というか、八歳で異性に恋するものなの?もっと純情なイメージがあったよ?別に彼女居ない歴=年齢ではない一人の高校生として。


「ど、どうしたの……?」


 頬を赤らめているララが僕に不安そうな視線を向けながらそう尋ねてくる。


「いや、何でも無いよ。僕のために来てくれるなんて嬉しいな」


 い、今更ララに冷たい対応を取るわけにも行かない。

 僕の心情的にも、ララの周りの大人たちのことを考えても!


「そ、そう!えへへ……」

 

 嬉しそうに、だらしない笑みを浮かべるララ。

 ……本当にどうしようか?


「ふふん!服は買ったし、次は装飾品店だね!早く行こ!」


「う、うん……そうだね」


 ど、どうせゲームの本編が始まればララだって主人公との恋愛フラグが立ち、そっちの方に行くことになるだろう。うん。

 僕が出来るだけすぐに自分の領地の方に帰ってそのまま領地の方に引きこもれば何も問題はなくなるよね?

 所詮僕に助けられた……吊り橋効果で惹かれているだけ、どうせ忘れてくれるよね。うん。きっとそう。


「あっ、その前に何か食べようか……もうお昼時だよね」


「ララは王都で食べることの許可をもらっているの?」


「いいや?というか、そもそも無断で王城から抜け出してきちゃったから……」


「なるほど」

 

 僕はちらりと視線を遠巻きにこちらを監視している男たちの方へと向ける。

 視線を受けた彼らが僕に見せるのはグーサイン。

 どうやら問題ないらしい。


「じゃあ、今更か。それじゃあ、ご飯食べれるところを探そうか」


「私、買い食いスタイルのほうが良い!」


「ん?そう。じゃあ、買い食いスタイルにしようか」

 

 僕とララは昼食を取るため、売店の方へと歩き出した。

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