第12話

 市井の街を見て回っている公爵家の嫡男である僕とこの国の第二王女であるララティーナ王女殿下。


「これなんてララに似合うんじゃない?」


「そう?のーくんがおすすめしてくれるなら買おうかしら」

 

 圧倒的権力者である僕たち二人は平民たちに紛れ、普通の服屋で買い物を楽しんでいた。


「こうして普段触れないものに触れるのも楽しいわね!」


「初めての挑戦は何事であっても心が躍るものだよ」


「うん!やっぱりそうだよね!」

 

 ララは僕の言葉に頷き、楽しそうな笑みを見せる。

 ……挑戦することは良いことだけど、平民が着るような服に王女が挑戦することは褒められることじゃないだろうけど。

 これは確実に大人たちから後で怒られるね。僕。


「こうして自由に買い物するのは初めてだわ」


「ん?初めてなの?」


「うん。初めて」


「王城から抜け出してこうして街に出歩いてみたりとかってしないの?」


「しないわね……そもそも私には一人で街に行くって発想がないし、王城から抜け出すなんて以ての他だよ!のーくんが一人で変装して王都に行くって聞いたとき、私はびっくりしたんだからね?」


「そう?僕は結構領内の街に遊びに行ったりするんだけどね。父上にも無断で家から抜け出して街に遊びに行った経験なんて一度や二度じゃない」


 僕は前世の記憶を思い出す前にも結構誰にも言わず無断で街の方へと遊びに行ったりしている。


「僕がララと初めて会った時だって無断で街の方へと遊びに行っていたときなんだよ」


「そ、そうなんだ……そんな頻繁に街に遊びに行っているんだね……怖くないの?」


「怖くないね。僕は自分が強い部類にいるという自負があるし」

 

 僕は前世の記憶を思い出す前から神童と呼ばれる天才児であり、齢一桁にしてもう大人の騎士を相手に完勝出来るほどの実力を持っているのだ。


「凄いんだね」


「当然。僕だからね」


「何それ!理由になってないじゃん!」


「むぅ……十分理由になっていると思うが。まぁ、良いや。そいやさ、今まで街に出よう!って思ったことなかったのになんで今になって急に街の方へと遊びに行くことにしたの?」


 僕は一連の会話の中でふと浮かんだ疑問をララへと投げかける。


「そんなの……のーくんと一緒に街を歩いてみたかっただからに決まっているじゃん」


「んなっ」


 僕が選んであげた服で赤く染まった頬を隠しながらそう告げるララに僕は思わず硬直してしまう。

 

「……」


 おやぁ?もしかして……いや、もしかしてのもしかしてだけど、ララとの恋愛フラグ立っていたりするのか?

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