第17話

 結構広い護剣の影の本拠地。

 長らく空き部屋となりながらも、綺麗な状態で保たれていた豪華な一室へと足を踏み入れた僕は自分が助けた少女と共にベッドへと飛び込む。


「わ、私……き、汚いので!こ、こんなベッドには……」


「貴様に汚いところなどない故、気にする必要はない。汚いか汚くないかを図るのは上に立つ者たる僕が決めることなのだよ!」


「ところでノア様……その少女のこと、どこまで理解しておいでですか?」

 

 同じ部屋にいるガレッドが口を開き、疑問を口にする。


「この子が可愛いってことかな」


「か、かわっ!?」


「可愛くなくては僕の胸の中に今、君は居ないよ」

 

 僕の可愛い発言に頬を赤らめる少女に対して僕はそう返す。


「……ノア様」


「もちろん。彼女が魔力暴走症であることは知っているよ」


「……ッ!やはりそれも知っておられたのですか」


「君たちを調べる中でね」


 魔力暴走症。

 それはとある『一族の血』を色濃く受け継ぐ者のみが発症する遺伝病のようなもので、患者は突然自身の魔力を制御出来なくなり、全身の皮膚が爛れ、体から動く気力を奪われ、最終的に死に至ってしまう。

 全身の皮膚が爛れ、醜い姿になることもあり、魔力暴走症に罹ってしまった人間は周りの人から距離を置かれることになり、最後の時を一人孤独に過ごす人が多いのだ。


 この少女も家族からお前と一緒にいるとその醜い病が移るとされ、家から追い出されてしまったという経緯を持つ。

 ゲームだと行く場所を失い、餓死する直前だった少女をガレッドが助けるという展開だったが、僕が介入し、ゲームの展開を変えた。

 少女がガレッドに助けられた日時を細かくゲームでは描写されていない……まさか、僕もたまたま王都に来た日に餓死する直前だった少女を見つけられるとは思わなかった。


「……魔力、暴走症?」


「君が気にすることではないよ……君の体を蝕んでいたものは僕が解決したからね」


「あ、ありがとうございます!」


「気にすることはないよ。僕はただ、自分のものを守っただけだからね」


「はひゅん!?」


「解決策も知っている、か……本当に凄まじいお方だ」


 魔力暴走症は暴走する魔力を押さえつけさえすれば簡単に治る……僕はサクッと少女の魔力に干渉して治したのだった。


「あぁ……そういえば、君の名前を聞くの忘れていたわ。名前は?」


「えっ……あ!はい!レイ、と申します」


「レイ、だね。うん。良い名前だ。これからよろしくね、レイ」


「よ、よろしくお願いいたします」


「ふふふ、良い返事だ。君に拒否権はないが、大事にしてやる故、安心すると良い」

 

 僕はたまたまの巡りあわせと自身の強権によって、自身の推しキャラであるレイを手中に収めることが出来たのだった。

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