第5話

 中学二年の夏、僕の双子の兄が自ら命を絶ちました。唯一、心を許せる兄の死は僕の精神を崩壊させるのには十分過ぎるものでした。その後、僕は祖母の家に引き篭もり、不登校になりました。

 兄の死にも涙が出なかったのです。そんな自分が大嫌いでした。



 そして高校二年の夏、僕は彼女に救われました。彼女は本物と存分変わらない偽者は、同価値だと言ってくれました。こんな汚い僕に手を差し伸べてくれました。

 彼女のお陰で気分は少し晴れやかになりましたが、まだ人間の心というものは、よく分かりません。僕の笑顔はまだ作り笑いのままです。

 いつか、人間の心が分かる日が来るでしょうか。

 いつか、彼女のことを心から好きだと言える日が来るでしょうか。

 いつか、仮面を必要としなくなる日が来るでしょうか。

 今はまだ、分かりません。

 ただ、希望はあります。それを信じたいと思うのです。



 これで、僕の語りは終わりと致します。

 捧ぐ人なんていない、暗い暗い回想録でありました。


 もし僕がもう一度、何かを語る機会があれば、それはきっと明るいものにするでしょう。



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カラスが綴る回想録 夢水 四季 @shiki-yumemizu

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