第4話
次の日──俺は弁当を食べ終わると、一人で廊下に出る。美帆を付け回すのはもう止めた。もしかしたらその方が、美帆の事が分かるかもしれない。そう思ったからだ。
俺は窓際で立ち止まると、窓から中庭を見る。すると──美帆の方へ駆け寄って行く浩介が目に入った。
「──あいつ等、あんなに仲が良かったのか」
美帆と浩介は時折、ボディタッチを交えながら、楽しそうに会話をしている。そんな様子を見ていると、美帆が浩介を誘うと口にしたのを思い出した。
「──あぁ……そういう事……だから俺に」
俺はそう呟き、その場を離れた。
※※※
放課後になり俺は部活に行こうと廊下に出る──1人で歩いていると後ろから「俊司」と、男子から呼ばれた。
俺が足を止め後ろを振り返ると「部活行くのか?」と浩介が話しかけてくる。
「あぁ」
「その前にちょっと付き合ってくれるか?」
「なに?」
「──お前、機嫌悪いの?」
いつものように返事をしたつもりなのに、浩介は俺の返事に何かを感じた様で、眉を顰めてそう言った。
「別に」
「そう、なら良いけど。ここじゃ人が多いし踊り場に移動しようぜ」
──俺達は黙って階段の踊り場へと移動する。人がチラホラ通っていくが、浩介は壁に背中を預けると、口を開いた。
「あのさ……本当にお前、美帆と付き合ってないんだよな?」
「は? だから付き合ってないって言っただろ?」
「──わりぃ。だったらさ……教えてくれよ、美帆の好きな人」
浩介も美帆の事が好きだったんだな。美帆もきっと浩介の事が好きだ。何で美帆が俺に好きな人を当てて欲しかったのか。それは親友である浩介との仲を取り持って貰いたかったからだろう。
美男美女同士、御似合いじゃないか。
「良いよ、教えてやる」
「マジか!? サンキュー!」
「美帆が好きなのはきっと浩介、お前だよ」
浩介は言葉にならない嬉しさを感じている様で、黙ってニヤつく。
「──良かったぁ……何となく気があるんじゃ? とは思っていたんだけどさ、なかなか一歩踏み出せなくてな。俊司が教えてくれたお蔭で、踏み出せそうだよ」
「それは良かった」
「じゃ、俺。これから美帆と約束があるんだ」
「頑張れよ!」
「おぅ」
嬉しそうに階段を下りていく浩介を見送ると、俺も歩き出す──。
「はぁ……何か部活に行く気なくなっちまった──いいや、サボっちまえ」
※※※
次の日の朝。廊下を歩いていると、正面から浩介がやってくる。昨日の結果、どうだったんだろ? 気になった俺は「おはよ。昨日はどうだったんだ?」と声を掛けた。
浩介は黙って足を止める。心なしか強張った表情に見えた。
聞いちゃまずかったかな?
ドキドキしながら返事を待っていると、浩介は口を開き「ダメだったよ」
「え? あ……そう……ごめん」
浩介はまた歩き出し、俺の横に並ぶと、「お前の予想……大した事ないんだな」と、八つ当たりするかの様にボソッと言って行ってしまった。
あいつじゃない……じゃあ誰だよ!! 浩介に大したこと無いと言われたのもあって、ジワジワと腹が立ってくる。
俺は直ぐに教室に向かい──美帆を見つけると挨拶もせず「美帆、ちょっと」と声を掛けた。
「俊司、おはよ。どうしたの?」
「良いからちょっと、こっちに来て」
「──あ、うん」
美帆は首を傾げながらも、付いてきてくれた──階段の踊り場に着くと、俺達は足を止める。
「美帆、聞きたい事があるんだけど」
「なぁに?」
「お前……浩介が好きだったんじゃないの?」
美帆は眉を顰めると「えっと……聞いたの?」
「あぁ」
「そう……残念、外れ。浩介君は親友に近い友達って感じかな?」
「友達? 俺が断った時に真っ先に名前が出たり、ベタベタとボディタッチしてる仲なのに?」
「親友に近い友達なら、喫茶店に誘うぐらいするでしょ? ボディタッチだって、他の子にもしてる程度だよ?」
「──お前……まさか俺に負けたくないからって嘘をついているんじゃないだろうな?」
俺がそう言うと、美帆は驚いた表情をみせ「そんな事しないよ! する訳ないじゃん!」と否定した。
「じゃあ一体、誰が好きなんだよ!?」
「それは──それは俊司が当ててよ。まだ時間はあるし、ね?」
美帆がそう言うと、チャイムが鳴り響く。
「行こ、授業が始まっちゃうよ」
「──あぁ」
なかなか当てられないのが凄くもどかしい……幼い頃から一緒だったから何でも分かっているつもりだったが……俺はこんなにも分かっていなかったんだな、美帆の事。
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