風呂場の不思議な声



 オカルトティックな話ではない事を、前置いておく。



 ここ暫く、風呂に入ると決まって外から響く声があった。

 

 九時過ぎくらいが多く、初めて聞いた時は、たいそう驚いた。

 私の暮らしている地域は、障害者支援の学校が近くにあるので、もしやこんな時間にどなたか出歩いているのだろうか。

 最初のうちは全く検討がつかず、少々ドキドキして風呂に入っていた。



 しかしそんなドキドキも束の間、次第にその声が、まるでガチムチパンツレスリングだな……と思うようになった。


 

 いや、笑い事ではない。

 赤さんみたいな笑顔で風呂に入っているところに、いきなり一瞬、淫夢が聞こえては終わる心境を考えてほしい。しかもほぼ毎日だ。

 

 誰かが帰宅した時の、なんらかの音なのだろうか。それとも酔っ払いの声なのだろうか。

 はたまた本当に、や ら な い か ♂ なのだろうか。



 すっかり風呂場の異音を考えるようになり、数日。

 夜しか眠れない私はついに、その音の正体を知ることとなる。


 

 話は変わるが、隣家のお父君は花粉症らしい。

 この時期はよくくしゃみを連発していて、かなり大きいので良く聞こえる。大変だなぁ、と毎年思う。


 しかし隣家のおかげで、私は風呂場の異音の正体に気がついたのだ。


 あの音はカチムチパンツレスリングでもなく、淫夢でもなく、どこかの家の風呂場で鼻をかむ音だったのだ。




……やりますねぇ!!

 



 

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