花粉の季節



 長年、自分は花粉症か、もしくはハウスダスト等の、アレルギー性鼻炎だと思っていた。



 花粉の飛ぶ季節や、埃っぽい部屋など、すぐに鼻がズビズビなってしまう。

 小学生くらいの時、元旦に一人で雪だるまを作ってはしゃぎ、その晩に熱を出してから、ずっとその調子で過ごしてきた。

 (なんでその瞬間からそうなったのかは、まったくわからん)


 アレルギー性鼻炎だろうなぁ……と漠然と思っていたものの、日常生活に支障が出るほどは酷くなく、室内にいると落ち着くので、気にしつつも放置していた。

 しかし、いよいよ寝苦しいし、やはり原因がわかった方が良いと改心し、昨年、アレルギー検査を受けたのである。


 どうせなら、多くのアレルギーについて検査してもらおう。そう思い、耳鼻科に行った時の私は、気軽さ半分、不安半分の状態だった。


 

 さて一週間後、食物アレルギーがないといいな、と思いながら結果を聞きに行くと、驚くべき結果だった。


 花粉症でもなんでもなかったのである。

 おまけに、人よりもアレルギーになりにくい体質、ということまで分かったのである。


 じゃあなんでこんな鼻水出てんだ!?


 少々憤り混じりに聞いてみると、鼻の粘膜が弱すぎる、という事なのだそうだ。


 鼻の粘膜が弱いので、花粉もさることながら、ハウスダスト等の外部刺激にのみならず、自分の体温の変化にすら反応してしまう、ということらしい。

 そういう人は、寝起きに鼻水が出て、食事で鼻水が出て、花粉で鼻水が出て、という具合に、鼻が反応してしまうのだそうだ。


 アレルギーがない事は嬉しいが、そういう次元の話ではない。生きている限り詰みである。



 ひぃん……と変な声が出そうになりながら、診察を終え、その日は漢方と点鼻薬を処方された。


 少しスタイリッシュな容器に入った、点鼻薬。

 容器を振ってから、鼻にノズルを向けてプッシュし、薬を吸引するという手順を説明され、意気消沈しながら帰宅した。


 ともあれ、鼻が弱いのは仕方がない。少しでも炎症が治るように努力しよう。

 就寝前に使用しろと言われた点鼻薬を胸に、私は決意を固めたのである。


 

 その晩。

 私は一人、台所で点鼻薬と格闘した。


 点鼻薬の容器を振って、鼻に向けてプッシュして、え? 薬出ない。あっ、こうか! えーと、このまま吸い込んで、す〜〜


「ぶぇえっっっくしょぉおい!!」


 


 全部でた。




 鼻の粘膜が弱い人間が、点鼻薬に反応しないと思ったか?



 






 

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