第2話 ステータスオープン

「ステータスオープン!」

 そう唱えた私の目の前に青色の薄い文字盤もじばんが浮かび上がった。


 名前:榊 譲二(サカキ・ジョウジ)

 Lv1

 年齢:48歳

 職業:魔法使い

 体力:687

攻撃力;78

 魔力:8888888

 防御力:260

 スキル:鑑定、火魔法、氷魔法、雷魔法、風魔法、魔法創造まほうそうぞう

 パッシブスキル:※女神の加護(弱)、魔術S

 ※は、女神のチカラで徐々に体力と魔力が回復していく効果がある。


 な、何だこのステータスは!?魔力高すぎやしないか!?魔術S!?しかも女神の加護まで……これが所謂いわゆるチートというやつなのか!?


 カリファに魔法が使いたいなどとお願いをしたばかりに、こんなチートを貰ってしまった……私はRPGでも地道に強くなるのが好きなのに、これでは楽しみがひとつ奪われてしまったようなものだ、ちょっと悲しい。


 とりあえずこのステータスは人に知られてはまずいな、特にこの魔法創造まほうそうぞうスキル、どこまでの魔法がつくれるのかは分からないが、使い方次第でとんでもないものになるかもしれないからな。


 ひとまずステータスの確認が出来たので、まずはカリファに言われた通り、近くの街を目指すことにした、恐らく少し先に見えているあの街だろう。


 街が近づくにつれて、私のワクワクは増していった、道中魔物に襲われることもなく少し残念だったが、やはり最初の街というのはワクワクするものだ。


 やがて街に着いたので、とりあえず1番入口近くに立っている門番らしき格好の人物に話しかけてみた。


「すみません、私旅をしている者なのですが……」


「おぉ!旅の方かい?ここはラズウェルの街だよ!」


 とてもいい返しが返ってきて、私は内心喜んだ。と、同時に本当に異世界に来たんだなという実感も得た。


「ここはどういった街なのですか?俗世ぞくせにはうといもので教えていただけるとありがたいです」


「なんだ珍しいねぇ、この街を知らないのかい?ここはこの【ウィーゼル大陸】の中でも3番目に大きい街だよ、料理も美味いし、酒も美味い!ここを治めている人がとても腕の立つ人でね、10年前まで小さな村だったのを、わずか5年でここまで大きな街にしたんだ!」


「へぇ……それは凄いですね、それともうひとつ聞きたいことがあるんですが、冒険者になるにはどうしたらいいですか?」


「なんだいあんた、この街で冒険者になろうってのかい?物好きだねぇ、もし冒険者になるんならここを真っ直ぐ行ったところに大きな酒場のような建物がある、そこが冒険者ギルドだよ」


「ありがとうございます!ちょっと行ってみますね」


 物好き……?その一言が引っかかったが、私はとりあえず冒険者ギルドを訪ねてみることにした。


 言われた通り真っ直ぐ進み、辺りを見渡しながら大きな門のようなものをくぐると、目の前には看板に『ソウルクリーガ』と書いた大きな建物があった。


「これが冒険者ギルドか……思ったよりデカイな」

 一人言を口にしながら、意を決してギルドの中にを進めた。


 中に入ると大量のテーブル席に、色々な服装をした冒険者らしき人達が座っていて、まだ日は明るいというのに、乾杯をしていた。


 そこに、私が入った事に気が付いた店員が駆けつけてきて、声を掛けてくれた。


「いらっしゃいませー!【ソウルクリーガ】へようこそ!本日はどうなされましたか?」


「あ、えーと、冒険者登録をしたいのですが……」


 私がそう言うと店員さんは、一瞬困ったような顔をして、すぐに笑顔に戻って私にこう言った。


「でしたらこちらへどうぞ!受付で登録をしますので!」


 私は違和感を抱きながらも、店員さんについて行き、受付まで来た。


 登録は簡単で、手をかざすだけでいいらしい、すると機械が勝手に冒険者カードを作ってくれてそれを受け取るだけみたいだ。


 冒険者登録をした私はホクホクして、依頼が貼りだされているであろう掲示板けいじばんの前にいった。


 そこで私は驚愕きょうがくの声を上げた。

「な……!依頼がほとんどない……!?あるのは薬草採取のみ!?」


 そんな私の悲痛な叫びを聞いたベテラン冒険者の一人がこっちに来てこう言った。


「あんた、この街での冒険者は初めてかい?悪いことは言わねぇ、ここで冒険者はやめときな、なんせここの領主の親衛隊【ロード・アルク】がこの辺の魔物を全部定期的に狩っちまうから、冒険者への討伐依頼も無くなってんだよ」


「そ、そうなんですか!?皆さんが冒険者になるって言った時微妙な顔をしたのに納得がいきました……」


「がっはっは!俺達もここには飯を食いにしか来ねぇからな!他の街で依頼を受けるのがいいと思うぜ!」


 私はその言葉を聞いてがっくりと肩を落とした、どうしよう、これではお金を稼ぐ事ができない。


 とりあえず街を見て回った所、1番安い宿屋でも1晩泊まるのに300ネカ必要なので、薬草採取でも何でもして稼ぐしかないな。


 掲示板を改めて見ていたら依頼の中に『天使の花の採取 報酬20万ネカ』と書いてあるものがあったが、誰もそれをやろうとしないので、近くにいた冒険者に聞いてみることにした。


「あのー、すみませんこの依頼って何故誰も受けないんでしょうか?」


「あー、その薬草は貴重過ぎて見つけられないんだよ、だから誰も手を付けてないし、報酬も高いのさ」

 その話を聞いて私はあることを閃いた。


「すみません、実物を見てみたいんですが、どこかにないですかね?」


「そうだな、街の博物館に飾ってあったような気がするぞ」


「そうですか、ありがとうございます!行ってみます!」


 よし、これで最初の方針が決まった、まず簡単な薬草採取の依頼を受けてそれをこなし生活費を得る、そして博物館に行き、天使の花の実物を見て依頼を受け、達成して大金を得る!


 私が何故ここまで採取の依頼に自信があるかというと、この街に来る途中自分なりにいろいろと魔法を作っていたのだが、その中で【サーチ】という便利な魔法を作ったのだ。


 この魔法は自分が鑑定して見たものを探すことが出来るというもので、欲しいものまでの距離と方角が頭に流れ込んでくるという仕組みである。

 この【サーチ】の魔法があれば、採取の依頼なんて簡単にクリア出来ると思ったのだ。


 ちなみにいろいろ試したが、この世界のことわりに反するような魔法は作れないようだ。

 等価交換が大事で、魔力があればあるほど創れる魔法の可能性は広がるが、何も無いところからお金を出したり等は出来ないようだ。


 早速今すぐに出来そうな、依頼を何個か受けて採取目的である薬草の実物を冒険者の方に見せてもらい鑑定してから外に出た。


 外に出て、早速自分が作った【サーチ】の魔法を試してみる事にした。


「目標『碧薬草あおやくそう』サーチ!」


「おわっ」


 すると頭の中に碧薬草あおやくそうまでの距離と方角が流れ込んできたのでびっくりして思わず声を上げてしまった。


「おぉ、これは便利だ」


 初めて使ったが、初めてでも便利だと分かるほどに鮮明に目標までの場所が分かったので、これはいずれやるであろう天使てんしはなの採取も期待できそうである。


 目標の方角に向かうとすぐ近くの森の中にあると判明したので、少し怖いが森の中に入ることにした。


「さて、何が待ち受けているかな」


 私は期待と不安を胸に森の中へと入っていくのだった。カリファから受けた、妹を探して助けるという最大の目的を忘れて……

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