第3話 森の探索をしていたら

 森の中に入ると、あちらこちらで魔物なのか動物なのか分からない声が聞こえてきた。


「これは何か出そうだな」


 私は身体が緊張きんちょうしていくのを感じながら、慎重しんちょうに進んでいく事にした。


 森の中を進んで行くと目標の『碧薬草あおやくそう』がちらほら見つかり始めた。


【サーチ】は魔力の消費も少ないしいつでもオンオフの切り替えが可能なので、必要な数をれたらオフにしよう。


 ちなみに人も目標にする事ができるので、もし森で迷ったとしても、実はこっそりと宿屋の店主を鑑定しておいたので、確実に街に帰ることができるのもこの魔法の強みである。


 順調に薬草をっていると、奥でガサガサ鳴っているのが聞こえた。


 私が身構えると、しげみの奥から三体の小鬼こおにのようなモンスターが飛び出してきた。


「おわっ、なんだこいつら!?」


 とりあえず向こうもまだおそってくる気配が無いので、鑑定してみる事にした。


 名前:ボクリン(緑)

 Lv3

 体力:107

 攻撃力:42

 魔力:0

 防御力:47

 スキル:十字切じゅうじぎ

 パッシブスキル:片手剣E、盾E


 すごい!魔物相手だとこんな感じに鑑定されるのか!これは便利だぞ鑑定最高だな。


 これなら私の魔法で倒せそうだ、とりあえず森で火魔法はまずいので、風魔法でも試してみるか。


 私はこの世界に来た時に頭に流れ込んできた魔法の名前を思い出しながら片手を前にかざし魔物に向かって魔法を放つ。


「【フーガ】!」


 となえると私が想像してた以上の事が起こった。


 巨大な風のやいばが三つ出たかと思うと、とてつもない速さで飛んでいき、あっという間にボクリンの首を飛ばし、後ろの木を何本もなぎ倒したのだ。


 倒れたボクリンは青白あおじろい光に包まれて小さなひし形の石を残し消えていった。


「か、風魔法強すぎないか……?」


 自分の魔法に驚きながらも、その石を手に取ると身体からだに力がみなぎり石は砕け散った、ステータスを見てみると、レベルが3になっていた。


 ちなみに魔力は増えなかった、元々が高い分増えないのか、これが限界値なのか分からないがもう既に多いので気にしない事にした。


 なるほどこれは魔物を倒すと経験値の石がドロップして、それを取ると経験値が自分に入りレベルが上がるという仕組みなのだろう。


 さしずめこれは魔石といった所か、魔物から取れる石だからその認識で間違いないだろう。


 しかしやはりレベルアップというのは嬉しいものだな、成長している実感がこうして目で見られるのはありがたい。欲を言えばあの効果音が欲しくなるな。


 レベルアップの感傷かんしょうひたりながら森を歩いていると、かすかに人の声が聞こえてきた。


 自分以外にもこの森で採取依頼をしている人がいるのかと、話しかけに行こうと思い声がする方へ歩いていった。


 会話が聞こえるくらいまで近づくと、何やらめているようだ。


「ちょっと何する気なのよ!話が違うじゃない!」


「おいおい、俺達はうそなんてついてねぇぜ?ここにお前の探し求めてる『天使てんしはな』はあるじゃねぇか!」


「そうそう、ほらここっすよここ!お前という名の『天使の花』が!」


「いやっ!ちょっと近づかないでよ!」


 フードを被った女性が男二人におそわれている、これは見過ごせないと思い、私はけっして声をかけた。


「そこの二人!何をしているのです!」


 すると男二人と女性はこちらに気づき、男二人が不機嫌ふきげんそうにこちらに近づいてきた。


「チッ、い〜い所だったのによぉ」


「何だぁ?このオッサン、アニキ知ってるっすか?」


「いや知らねぇな、ただの命知いのちしらずなジジィだろ」


 なんだかバカにされているようだが、それどころではない、私は如何いかにこの男達を殺さずにらえるかを考えていた。

 なぜなら先程さきほどボクリンに放った魔法では確実に殺してしまうからだ、さすがに人間は殺したくない。


「あっ!危ない!」


 その声を聞いた時にはもう遅かった、アニキと呼ばれていた方が私にナイフでりかかっていたのだ。


「ぐっ!」


 なんとか反応した私はうでを少し切られるだけでんだが、やはり痛みというのにれはない、かなり痛い。


 ジンジンと熱く痛む傷を我慢し、私は魔法を撃つために集中した。


 魔法はイメージだと何かで読んだことがある、それがこの世界でも通用するかは分からないが、やってみる価値はあると思う。


「傷つけないイメージ……!傷つけないイメージ……!」


 小さくそう唱えながら、私は男二人に向けて自分で作成した、ある魔法を放った。


「【レスト】!」


 私が魔法を放つとひかりが男達に当たり、一瞬で男二人を拘束こうそくすることが出来た。


 この魔法も私が道中どうちゅう考えた相手を捕縛ほばくする為のもので、もしもの時にと思ったが、つくっておいてよかった。


「なん…!なんだこりゃあ!外れねぇぞ!」


「アニキィ!こりゃなんすか!こんな魔法見た事ねぇ

 !あいつ何者なにもんなんすか!?」


「くそっ!俺が知るかよ!おいてめぇ!これをはずせオ

 ラァ!」


「すみませんがそれは出来ません、あなた達にはつかまってもらいます、これ以上悪さをしない為にもね」


 私がフードの女性の方にけ寄って行くと、恐怖が無くなり安心したのか気を失っていた。


 とりあえずあの男二人は街の衛兵えいへいに任せて、私は女性の方をおぶって宿まで帰ることにした。おぶる時に、私が創った軽くさせる魔法【フワリ】をかけたことは胸に秘めておこう。


 街に帰るともう夕方で、街の人も少なくなり始めている頃だった。


 衛兵に事情を話し、森に行ってもらった後、私は目星を付けていた宿屋に辿たどり着いて、部屋をひと部屋借りて女性をベッドに寝かせた。


改めて見ると顔立ちがとても整っており、フードを取ると現れた萌黄色のショートヘアが美しく、神々しさすら感じた。


その女性に擦り傷や切り傷が何ヶ所かあったので、あの魔法を試すチャンスだと思い、私は手をかざして魔法を唱えた。


「【メディ】」


 この魔法は唱えると黄緑色きみどりいろあわい光が対象者をつつみ、傷を治すという魔法だ。


 先程の戦闘で傷ついた時は、女神の加護の力ですぐに治ったが、これ以上の怪我をする事があったら痛みに耐えられる気がしないので、すぐに傷をを治せる魔法を帰り道の間で創っておいたのだ。


 ちなみに傷を治す魔法は【ヒール】というものがあるが、状態異常を治す【スリク】と別になっていて使いにくいため、両方を掛け合わせた魔法があれば便利だと思ったのだ。


 怪我が綺麗に治り、顔色も良くなって眠りも深くなったみたいなので、私はお風呂を済ませた後、彼女の隣のベッドで睡眠をとることにした、今後の事は明日の自分に任せようと思いながら。





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