イケおじ好きの女神に呼ばれて転移したおじさん、スキル【魔法創造】で異世界を謳歌する

きんぐおかん

第1話 48歳魔法使いになりました

 皆一度は経験があるだろう。ある日特殊な能力に目覚め、魔法を使って日常生活をしたり、魔物と戦う自分を妄想したりする事。


 私は今年48歳になったが、未だにその妄想癖もうそうへきが消えない。


 そんなある日、私が目覚めるとそこは真っ白な世界だった。


「ごめんなさいっ!勝手に呼んですみません!」


 とても慌てたような女性の声が突然聞こえ、私は驚いて言葉も出ず、目の前の人物に注目する。絶世の美女、とはよく言ったものでこの世にそんなものは存在しないと思っていた。


 しかし私の目の前にいるのは紛れもなく絶世の美女だった。スラッとした体型に、綺麗な若草色わかくさいろのような長髪、顔立ちは整い、着ている白い羽衣からは、彼女を女神としか呼べないように作られているとしか思えなかった。


 そんな彼女が私に深く頭を下げているのだ。


「えっと……とりあえず、頭を上げてください。すみませんが、貴女は何者ですか?」


「あぁ……すみません。状況の説明が先でしたね」


 女性は深呼吸をして、私に言った。


「私の名前はラ・カリファ、ここ日本を担当する女神です、カリファと呼んでください」


 カリファは続けてこう言った。

「この度は、私の勝手で貴方をここに呼んでしまった事、本当に申し訳ありませんっ!」


「え……?」

 私は初めて空いた口がふさがらないという体験をした、とにかく突然の事で訳が分からないので、理由を聞くことにした。


「私は何故呼ばれたのでしょうか? 」


 そう言うと、カリファは語り始めた。


「いきなりで申し訳ないのですが、私の妹を、救って欲しいのです!私の妹は天界で優秀だったため、他の女神に嫉妬され、騙され立ち入り禁止区域きんしくいきあやまって足を踏み入れてしまったのです、そのせいで妹は天界を追放され、異世界へととされてしまったのです」


 私はRPGゲームも好きだが、異世界ラノベもよく読んでいたため、状況がすぐに理解できた。


「なるほど、それで私に異世界に行って妹さんを助けて欲しいと……」


 私は自分の人生について1度振り返って見ることにした、結婚も難しい年齢、仕事にやりがいは感じない、友人と呼べる人もほとんどおらず、一匹狼な人生を送っていた私は、現世に未練などないという結論にいたった。自分で言っていて悲しくなったが、それは今は置いておこう。


 ふと、考えているうちにひとつの疑問が浮かんできたので、聞いてみることにした。


「カリファ様、何故私が選ばれたのでしょうか?」


 するとカリファは少し目を泳がせた後、恥ずかしそうにこう言った。

「お、怒ったりしませんか……?」


 理由は何か分からないが私が怒るような事なのだろうか?


「まぁ……理由によりますけど、教えてくれますか?」


 カリファは上目遣いで私を見あげ、恐る恐るこう言った。


「わ、私……イケてるおじ様に目がなくて……

 す、すみませんでしたぁぁああ!」


 先程の女神然めがみぜんとした態度とは一変、指と指をつんつんしながら恥ずかしそうにするカリファを見て、苦笑いをしながら思った。

 なるほど、女神も人も変わらないのだな。


 不安そうにこちらを見つめるカリファだが、私の心はもう決まっていた。


「カリファ様、私は現世に未練などないので、妹さんを助けるという使命、受けようと思います 」

 私はカリファにそう笑いかけた。


 するとカリファは何やらもだえた後、興奮したように私の方に来てこう言った。


「ありがとうございます!!行ってくださるなら、私から生きていくチカラを授けましょう!ええ、他ならぬ貴方の為ですから!」


 私は昔からRPGのゲームが大好きで、その世界に憧れていたので、最初から異世界に行きたい!と思っていたが、私の考えている物と全然違う可能性があるので、カリファが落ち着いてから質問をしてみることにした。


「では、まず異世界というのは具体的にどう言った場所なのでしょうか?」


 カリファは小さく咳払いをして、説明を始める。

「そうですね、簡単に言えば冒険者がいて、魔物がいて、魔法がある、貴方の世界で言うところのRPGのような世界ですね 」


 それを聞いて私は内心ガッツポーズをした。

 そこから私はカリファに異世界について色々聞いた。要点をまとめるとこうだ。


 異世界には人間界と魔界が存在しており、種族も人間と魔族以外にも、エルフや、獣人族、鳥人族と、多種多様な種族がいること。


 そして言語は女神のチカラで普通に話せるようにしてくれること。


 最後にお金だが、その異世界ではネカというお金の単位を使っているが、日本の数え方と変わらないと言っていた。


 説明を全て終えたカリファは、一呼吸置いてこう言った。


「では私から、貴方が異世界で生活する上でのチカラを授けるのでこちらへ」


 カリファが私の胸に手をかざしたと思いきや、暖かな光が溢れ私の胸にすーっと入っていった。


「異世界に行った際にステータスを確認しておいて下さいね。他に、何か聞きたいことはありますか?」


「そうですね、私は異世界に行ったら魔法を使ってみたいのですが、魔法って私にも使えたりしますか?」


 私はこの一言で、自分のこれからの人生が大きく変わるとは、この時は思いもしなかった。


「あ、それなら魔法もたくさん使えるようにしておきますね!遠慮しないでください!推しには全力を注げ!これが私のモットーですから!」


 そう変な笑みを浮かべるカリファに言われ、私は苦笑いをしながらお礼を言うのだった。


 それでは、とカリファが私に微笑ほほえみかける。

「これで準備は大丈夫ですね?ではこれから異世界への扉を開きます、扉を出たら何も無い草原に出ると思うので、まずは近くの街を目指してください」


 扉を開ける前に、カリファにお礼を言っておかねばと思い振り返る。


「カリファ様!私にこのような機会をくださった事、本当にありがたく思っております!必ずや妹さんを救い、天界へと帰れるようにします!」


「こちらこそ、私の勝手なお願いを聞いてくださり、本当にありがとうございます!妹のことよろしくお願いします!向こうの世界でも、お元気で!」


 そう言いながら笑顔で手を振る彼女は、今まで見たどんなものよりも美しく綺麗に感じた。


 そして私は、期待に胸を膨らませながら、カリファが作った扉を開くーーー


 扉の先はカリファの言った通り草原だった。

「おぉ……ここが異世界……!」


 どこまでも広がる青空、風が心地よく、見渡すと生き生きと生いしげ草木くさきがとても美しい。


 こんな素晴らしい世界に招待してくれた女神カリファに改めて感謝の念を送っておいた。

「さて、まずは……」


 私はワクワクする心が抑えられずこの言葉を発した。


「ステータスオープン!」

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