第2話 許嫁の王女ニーナ







 風が強すぎず弱すぎず吹いている。

 草木は風に導かれ踊っている。

 太陽は今日も僕らを照らしている。

 その太陽によって木に影が出来る。

 そこで僕は昼寝をする。

 あぁ、なんて最高なんだろ。

 ずっとこのままでいたい。

 王とか王子とか忘れてこのまま。


「またここで昼寝をしているの?」

 気持ちよく寝ている時に、1人の女性の声が聞こえてきた。


「一緒に寝よう。最高だよ」

 僕が寝ている隣を叩く。


「お言葉に甘えてと言いたいところだけどはしたないからできない」


「お嬢様っぽい」


「そんなことないですよ」

 僕をじっと見つめる。


「言葉がそう聞こえるよ」


「そんなことないです」

 顔を膨らませて、僕の隣に座った。


「寝なくていいの?」


「ちゃんと睡眠とっていますから大丈夫ですよ〜」

 手を発声器のような形にして言ってきた。

 髪はロングで透き通った金色をしていて、前髪の左側の一部に赤色のラインが入っている。

 彼女は日々多くの人から好かれる王女様でいる。

 だから、こうして僕といる時は言葉や振る舞いも出来るだけ彼女らしく、王女様ではないラフな彼女でいる。


「流石王女様」


「あなたも王子様でしょ」

 僕達は隣接してる王国の第二王子と第二王女。

 年はお互い16歳で高校2年生。

 同じ学校に通っている。

 まだ、物心ついてまもない小さい時からの知り合いだ。


「この傷どうしたの?」

 顔や手にあるアザや傷を見て言う。


「うーん。ちょっと転んだ」

 彼女には弱いところを見せたくない。

 初めて会ったのは6歳の時。

 初等部に入る少し前にあった、たくさんの王様達による立食会。

 第一印象はただの可愛い子って感じだった。

 けど今の彼女は綺麗な女性って感じだ。


「嘘つかないで、とてもそうとは思えない」

 怒った口調で言ってくる。


「ごめん本当はペットのコロンにめっちゃ噛まれた」


「噛まれたからってこんなアザや傷はできないでしょ」

 ツッコまれた。


「近頃の犬は賢いからパンチやキックも浴びせてくる」

 ボケて返した。


「何適当なこと言ってるんですか」

 お互い笑いながら会話する。

 とっても幸せな時間。


「うーん」


「どうしたの?」

 考えこみながらまた僕の姿を見る彼女。


「草木が生い茂るなかで眠っていてまるで"自然の妖精"みたい」

 今度は彼女がボケてきた。


「その透き通った青い瞳をして僕を覗いている王女様こそ精霊みたいだよ?」

 簡単にはツッコまない。ボケ返す。


「精霊ではなく第二王女ですよ」

 少し笑いながらアザや傷が無かったおでこを軽く叩かれた。


「そういえば・・・」

 気になっていたことを聞いてみることにした。


「例の"あいつら"とは上手くいったの?」

 他の国の王子達だ。

 僕とは許嫁だけど、彼女はそいつらとお見合いをした。

 彼女とそいつら双方の親により仕組まれたことだ。


「上手くいく訳ないでしょ」

 呆れ顔を浮かべる彼女。

 僕は良かったと安堵する。


「"顔"は良かったよ?」

 でも、安堵あんど感は見せず冗談っぽく言う。


「けど他はダメダメですよ」

 何か嫌なことがあったのだろうか下を向く。


「何かあったの?」


「しつこいんです」

 いきどおった表情になる。


「だいたい・・・」

 言葉を溜める。


「なに?」

 下を向く彼女。


「私の旦那様はあなたじゃない///」

 膨れ顔をしながらこちらを見る彼女。

 眠気が飛び自分の心臓の鼓動が早くなっていくのを感じた。

 僕達は1年ほど前から許嫁になった。

 初めて会った時から許嫁になるまでの10年ほどは全く連絡をとっていなかった。

 こうして、会うようになったのも1年ほど前から。


「それは、そうだね」

 高まる心音をバレないように空を見上げながら返事をする。

 僕の好きな気持ちは伝わってると思うし、ここで照れを見せたら彼女にずっといじられるから。


「その月の首飾り似合ってる」

 誤魔化すように彼女の装飾品を褒めた。


「ありがとう」

 またもや、可愛い笑顔で見てくる。照れを見せないようになんとか顔を隠した。


「いつ結婚出来るのでしょうか」

 僕と許嫁にはなったが結婚の予定は決まっていない。

 尚且つ別の国の嫌いな王子とお見合いをした。

 積もった不安からか思わずお嬢様言葉に戻る彼女。


「わからない。だから、今は結婚よりも昼寝がしたい」

 元気づけようと冗談を言った。

 

「それって私と結婚したくないってこと?」

 逆効果だった。

 彼女は心配な顔を浮かべこちらを見てくる


「違う違う。絶対に結婚するし、僕は君以外と結婚する気もない。ただ、僕達の結婚はお互いの国民の人からかなり注目されてる。気長に待とう」

 慌ててフォローする。

 お互いの親に利用された政略結婚とは言ってもお互い相手のことが好きなのは本当なんだ。

 兄さんとは違う。


「本当に私と結婚したい?」

 またも心配そうに聞いてくる彼女。

 フォローが足りないみたい。


「うん、したい。だって公務とか責務とかサボって昼寝してても許してくれる人そうそういないもん」

 また冗談を言ってみた。

 ガクッと倒れ込む彼女。


「それって私が都合がいい女ってこと?」

 心配そうな表情ではあるが、さっきよりも少し明るく言ってくる。


「そういうことになるかも」

 とにかくどんな形でもいいから笑わせたい。


「も〜〜」

 優しく笑いながら僕を見る。

 














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