大好きな人だけには知られたくなかった弱いところ、どうせ知られたんだ開き直ろう。弱い自分を演じるのをやめた王子様、強さを解放し無双する。

爽快 そうかい

プロローグ

第1話 弱さを演じる僕



        プロローグ



 セントリアン王国、そこが僕の住んでいる王国の名前だ。


「入れ」

 扉を開き王様の部屋に入る。


「父さんなんか用?」

 そう言った瞬間顔を殴られた。


「何故私からこんな息子が生まれたのかがわからん」

 身長200cmはあるであろう巨漢の父さんが、殴られて倒れている僕を見下ろしてくる。


「お前は何故"兄"と違って出来損ないなんだ!」

 そう言って倒れている僕に蹴りと怒号をたくさん浴びせる。

 何回も何回も蹴られ、意識を失いかけた辺りで蹴りが止まる。


「お前にもし許嫁がいなかったらとっくに殺している」

 とても息子に対する言葉とは思えない程冷たく言い放つ。


「だが、こんな使えなくて、価値もない、生きる資格もないクズでも利用できるからな」

 僕は掴まれ、部屋の外に投げ出された。


「せいぜいくたばるなよ、"レイ"」


 たくさん蹴られて意識が朦朧としているが、周りに執事やメイド、城の兵士達がいるのがわかった。


「本当に無様な姿ですね王子」


「お兄様とはえらい違いだ」


「こんな弱々しい王子。王国の恥晒しだわ」

 たくさんの罵声を浴びせられる。


「王様が来る前に早く医務室に運びましょ」


「機嫌を悪くされては困るからな」


「けど、こんな王子を手当てする必要あるか?」


「必要はありますよ。だって生きててもらわないと王女様と結婚ができないではありませんか」


「そうだぞ。利用価値がなくなる」

 僕は道具としか見られていないらしい。

 王子なのに酷い言われようだ。


「こんな王子本当に生まれなければ良かった」

 その言葉を聞いたあと、意識が保てなくなりそのまま眠ることにした。


 僕はこの王国で出来損ないの王子扱いをされている。

 だから、全く将来を担う王として期待されていない。

 学校のテストは赤点ギリギリ。

 運動も全くできない。

 2つとも、とてもいずれ国を率いる王子とは思えない成績。

 父さんにも、母さんにも、お城の人にも嫌われている。

 けど、この国の人には嫌われていない。

 なぜなら、国に対しての国民の期待や支持を下げないために、父さんが僕が出来損ないだということを公表していないから。

 でも、国の人は僕よりも圧倒的に兄さんに注目しているから僕を嫌っていないだけで、僕への扱いは父さんや母さん、お城の人達と対して変わらない。

 

 初めて弱いやつ扱いをされたのは6歳ぐらいの時。

 小学校に入学してからだ。

 0点のテストを見せて、クラスでも1番足が遅いことを言った。

 そしたら殴られた。

 ひたすらに殴られた。

 そこからは定期的に暴力を振るわれるようになる。


 僕が歳を重ねる度に暴力の強さと、頻度は増える。

 そして、城の人達からも段々と嫌われる。


 でもこれは別に嫌なわけではない。

 だって自分で望んでその道を選んでいるから。


 僕からしてみたら、強いとか、かっこいいとか正直めんどくさい。

 だって強くなればなるほど、かっこよくなればなるほど、周りの人に期待や憧れを抱かれていつまでも成長し続けなければいけないから。

 特にそのめんどくささを10歳離れた兄さんから教わった。

 この国で何十年に一度の天才と言われ周囲から期待され続けた兄さん。

 ちゃんと小さい時から強くなるために勉強も運動も鍛錬を行ない、たくさんの努力をした。

 その結果兄さんはかなり強くなり、かっこよくもなり期待に応えた。

 けど、周囲からの期待は止まることがなく、強くなっても強くなっても、成長しても成長しても、同じように期待され続ける。

 なのに、強くなり成長し続けても何も褒めてもらえない。

 なぜなら、強くなり成長することが周りからしたら当たり前だから。

 期待に応え続けることが当然だから。


 期待をされ続けた結果兄さんは、強くなっても強くなっても求められ、期待され続ける"強さ"というものが怖くなり、どんどん弱っていった。

 そうすると強さは止まり、成長も止まる。

 けど周りの人達はその事実を受け入れないため期待し続け、無理矢理強くなり続けさせようとする。


 その結果、兄さんの心は壊れた。

 強さに怯え、弱さにも怯え、生きてるのがやっとという姿になった。

 僕が見た、強くなってく、強いというものの先。

 期待は人を強くするけど、最後は人を壊す。

 そんな姿を見て、僕は最初から強さを求めず、期待もされない、弱いままでいようと思った。

 だから、物心ついた時から弱い自分を演じようと思った。

 強いのってやっぱりめんどくさすきる。

 周囲から弱いと思われている方がマシだ。

 暴力や暴言を浴びせられようとも期待をされないから邪魔者あつかい。

 それだったら注目されないため、誰にも見られずに済む。

 最初は確かに嫌だったけど、慣れれば平気になるし、何より期待され続ける方が圧倒的に嫌だ。


 それに、中等部2、3年生になる頃には暴力の数も減った。

 僕に対する期待というものが全くなくなったからだろう。

 さっき受けた暴力だって父さんが気晴らしするための暴力だ。

 暴力を受けたのだって数ヶ月ぶりだった。


 僕が長年弱さを演じてきたことの勝利といってもいい。


 けどね、聞いて欲しいのは"弱さを演じて"きたってこと。


 つまりね、


 本当は、、、



 兄さんを遥かに越すぐらいかなり強い。

 数万年に一度の逸材ってやつです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る