第28話 賑やかな放課後

寝室でうとうとしていると、ドアがノックされてサラが入って来た。

「アティカス王子がいらっしゃいましたが、いかがなさいますか?」

私は身体を起こし、パジャマの上にガウンを掛けてもらって病人らしさを装った。

「お通しして」

そう言うと、あんたの方が病人みたいだよ!っていう程にやつれたアティカス王子が現れた。

「アティカス様、どうなさったのですか?」

驚く私に、アティカス王子はホッとした顔をして近付くと、そっと私の両手を握り締めて

「フレイアが心配で、この三日間生きた心地がしなかった」

そう言われて申し訳なくなってしまう。

「ご心配をお掛けしてしまい、申し訳ございません。その上、このような姿でお会いする事もお許し下さい」

小さくお辞儀をする私を、アティカス王子が突然抱き締めて来た。

(えー!何?何?ちょっと待って!!)

突然の事でパニックを起こしていると

「そんな他人行儀な事を言わないで……」

切なそうな声で囁かれて、もう……私の許容範囲を簡単に超えていた。

前世で恋愛経験皆無の私が、突然、こんなイケメンのマモちゃん声に抱き締められて耳元で囁かれたら……。

パニックで意識が朦朧としていると、そのまま押し倒されて

「フレイア……。僕はフレイアがいなくなったら生きていけない位に、きみが大好きなんだ。だから、無理しないで」

そう言われてしまう。

見上げたアティカス王子の顔はめちゃくちゃ格好良くて、ふと思い出した。

(あ!これって、第1章で攻略対象の好感度がMAXになると出てくるご褒美スチルだわ!)

思わずゲームの画像とリアルを脳内で比べて

(いやぁ~!リアルはめっちゃ迫力あるわね~)

と、思わず関心してしまった。

画像は絵だけだけど、リアルは吐息とか熱い眼差しから切なさがめちゃくちゃ伝わるし、何より体温と香りね……。

さっすが攻略対象人気ナンバーワンだけあって、良い匂いをしていらっしゃる!

(あ!ちなみに、レイモンド兄様は爽やかな香りなの)

こりゃ~、マモちゃんファンは興奮するわな!あぁ……マモちゃんファンのまいこたんだったら、卒倒もんよね……きっと。

確か、初めてこのスチルとご褒美ボイスを見た時、あまりの興奮にゲーム忘れて100回はリピートして聞いたと言っていたわね。(しかも音声録音までして、毎日聞いていた筈。確か、まいこたんのスマホ。フラソのアティカスボイス集があった気がする)

しみじみと前世のゲーム仲間を思い出しながら感傷に浸っていると、頬に温かい感触が頬に触れた。

それがアティカス王子の手だと気付いて、ハッと我に返る。

大きなアティカス王子の手が私の頬に触れ、親指が優しく唇をなぞった時に気付いた。

(あれ?アホ面でイケメン王子の顔を眺めながら、前世を思い出して感傷に浸っていたけど、今、ヤバい状況じゃない?)

そう思った時には、時既に遅し!

ゆっくりとアティカス王子の顔が近付き、瞳が閉じて行く。

(おぉ!さすがイケメン王子!睫毛長っ!)

なんて、又、関心してしまい

(関心している場合じゃない!!)

と、自分に喝を入れて

「アティカス様……ちょっと……」

と、身動ぎをして抵抗した時だった。

ニョキっとアティカス王子の背後から手が現れ、ガシッとアティカス王子の頭を掴むと、そのまま後ろへとアティカス王子を移動させた。

「痛い!痛い!」

アティカス王子の叫びと共に、何やら覚えのある光景に唖然としていると

「ア~ティ~カ~ス~!」

普段の優しいお兄さんボイスは何処へやら。地の底から這うような、低い声が聞こえて来た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪役令嬢に転生したけど、モブキャラに恋をしたらいけませんか? 青空 @Aozora_6

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ