第21話 魔法学園入学式②

「それにしても……レイモンド兄様、よろしいのですか?」

「何がだ?」

「今日は入学式ですのよね?でしたら、生徒会のお仕事があるのでは無いですか?」

隣を歩く、美しくも凛々しい兄にそう言うと、ニヤリと笑ってから

「大丈夫だ。うちの生徒会役員は、僕一人が抜けようと回るくらいに優秀だ」

なんて答えた。

「妹の為に、生徒会の仕事をサボるなんて……。シスコンと噂をされて、レイモンド兄様の婚期が遅れたら……と思うと心配ですわ」

わざとらしく溜息を吐くと、レイモンド兄様は声を上げて笑いながら

「シスコンは事実だからな。フレイア、今日は制服のリボンと同じ色のリボンを髪に結んでいるのだな。とても似合っているよ」

と言って、私の髪の毛に触れた。

「うふふ、ありがとうございます。レイモンド兄様に褒められると、とても嬉しいですわ」

「本当に良く似合う。まるで、青い花の妖精が舞い降りたようだよ」

そう言われ、思わず鳥肌が立った……。

そうだ。ここはゲームの世界だから、普通なら男性が絶対に言わないような甘い言葉を囁くんだった。

「オホホホ……。兄様ったら、褒め過ぎですわ」

ここは笑って誤魔化すしかない!

これ以上、その美しいお顔と癒し系VOICEで甘い事を言われたら、胸焼けしてしまいそうだ。

そんな事を考えながらふと思ったのだが、ゲームの中のレイモンドはこんなキャラだっただろうか?

確かにお兄ちゃんキャラで、優しいのは変わらない。

ただ、レイモンドとフレイアの兄妹仲はあまり良くなかったように記憶している。

(まぁ……ゲームの中のフレイアは、我儘な悪役令嬢だったしね)

だから断罪された時、レイモンドはさっさとフレイアを見限ったのよね。

チラリと隣を歩くレイモンド兄様に

「ねぇ、兄様。もし、私が断罪されて処刑されたり、国外追放になったらどうします?」

と質問してみた。

するとレイモンド兄様は顔色を真っ青にして

「フレイア……、何をしたんだ?まさか、ルイスの下着を盗んだのか?それとも、寝込みを襲ったのか?」

そう言うと、私の肩を掴んだ。

私が深い溜め息を吐いて

「どちらでも無いですわ!しかも、何故、私の犯罪は全てルイス様関連なのです?」

と呟くと

「はぁ?そんなの、他に考えられ無いからじゃないか」

レイモンド兄様はそう言うと、私の頭を優しく撫でて

「僕の知るフレイアは、人の痛みが分かる優しい子だ。そんなフレイアが断罪されるとしたら、ルイスの事以外は考えらないからなぁ~」

そう言って考え込んでしまう。

「そんなに真剣に考えないで下さい!ただ、もしも……の話を聞きたかっただけですから」

と呟いた。

するとレイモンド兄様は少し考えてから

「処刑の場合、減刑を嘆願するかな?国外追放になったら、一緒に着いて行くよ。兄妹水入らずで、海外で暮らすのも悪くない」

そう言って、呑気に笑っている。

「兄様!そんな事をしたら、バルフレア家の直系の血が絶えてしまいますわ!」

「何を言っているんだ。お前が断罪されたら、バルフレア家はお家取り潰しなんじゃないか?」

「まぁ!それは大変ですわね」

私が驚いた顔をすると

「だから、そうなったら一緒に国外逃亡してあげるから安心しなさい」

と言われてしまい

「そこまで、レイモンド兄様の幸せは奪えませんわ……」

そう答えて苦笑いした。

「レイモンド兄様は、レイモンド兄様の幸せを考えて下さって良いのですよ」

ポツリと呟いた私の言葉に、レイモンド兄様は小さく笑うと

「ありがとう。僕の幸せは、まずフレイアが無事にアティカス王子と幸せになる事かな?それが叶ったら、ゆっくり相手を探すよ」

そう答えて笑っている。

(私の幸せは、ルイス様と幸せになる事なのだけれど……)

そう思いながら、かなりシスコンな兄レイモンドが心配になってきた。

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