第19話 いざ!魔法学園へ!

 馬車に揺られること数時間。

いよいよ、魔法学園に入学する。

待っていてね、ルイス様!

やっと……やっと、貴方の素敵なお声を聞く事が出来るのですね!

胸を踊らせ、レイモンド兄様に

「ルイス様とは、すぐ会えますの?」

目を輝かせて聞くと、レイモンド兄様は歯切れの悪い言い方で

「あ……いや、ルイスは用事があって外出している」

と答えた。

「まぁ……、お忙しいのですね。仕方ないですわね」

私が大人しく納得すると、レイモンド兄様がホッとした顔をしたのが引っ掛かる。

「レイモンド兄様……。まさか、わざと会わせないようにした訳では無いですわよね?」

ギロリと睨んだ私に

「まさか!本当に、ルイスは用事があって……」

と呟いた。

「まぁ、良いですわ!どんなに邪魔されたとしても、魔法学園では会えますもの!」

そう言って微笑んだ私に、レイモンド兄様が暗い顔をして窓の外に視線を向けた。

きっと、レイモンド兄様は何か大変な事を隠していらっしゃるのだというのは分かる。

それは間違いなく、ルイス様の事だという事も。

少し考えて、ハッとした。

……まさか、ルイス様の声は私が死んだ事により、運営会社が繰り上げ当選にしてボツにしたんじゃ……。

そうなると、この世界のルイス様の声は……憎き機械音なのかもしれない!

私は絶望にムンクの叫びのような顔になっていたらしく、レイモンド兄様が

「フレイア……お前、まさか気付いたのか?」

と、顔を青ざめた。

「……そんな、信じられませんわ」

涙を浮かべて呟く私に、レイモンド兄様がそっと私の肩を抱き寄せると

「フレイア、許してくれ。僕にはどうにも出来なかったんだ」

「レイモンド兄様!兄様のせいではありませんわ!私が……私が……前世で願いが叶う前に死んだから……」

と、涙を流して呟くと

「……フレイア?何か勘違いしていないか?」

レイモンド兄様が目を点にして呟いた。

「え?勘違い?」

「お前、ルイスがなんだと思っているんだ?」

そう聞かれて

「ルイス様のお声が……『ポポポポ』って言う機械音なのですわよね!」

と叫んだ。

するとレイモンド兄様は呆れた顔をして

「お前な……そんな訳無いだろう?」

そう言うと

「心配して損したよ」

なんて言うから、私はレイモンド兄様に

「では、兄様は何を隠していらっしゃるの?」

と聞くと、レイモンド兄様は悲しそうな笑顔を浮かべ

「それは……嫌でもすぐに分かるから」

そう答えたきり、口を噤んでしまった。

嫌でもすぐに分かる?

もしかして……ルイス様のお声が変だったりするのかしら?

あのお顔で、クレヨ○しんちゃんの声とか?

「おら~、ルイスだぞう~」

なんて言っちゃうの?

待って!しんちゃんは幼稚園児よ。

ショタルイス様のお声が、あんなに可愛らしかったのだもの。そんな訳は無いわ!

……となると、高校生の声よね?

やたら高い声とか?

千葉繁幸さんの某メガネキャラの声?

「ラ○さ~ん!」

って、叫んじゃう系?

待って!メガネはメガネでも、違うメガネなのよ!解釈違いも甚だしくない?メガネはメガネだけど、メガネ違い過ぎない?

メガネという点だけで選んだとしたら、運営会社を恨んでやる!

でも待って!落ち着いて、私。

私が死んだ時、天使らしき奴が「本来なら声を聞いて狂喜乱舞した挙句、興奮して血管切れて死ぬ」みたいな話をしていなかった?

……でも、本当に狂喜乱舞だったの?

怒りに任せて血管が切れたとかでは無い?

あと他に考えられるのは、もしかして……山ちゃんじゃないの?

ちょっと待って!有り得る!有り得過ぎるわ!

もしかして、他の攻略キャラに七色の声を持つ山城宏一さんが担当する事になり、モブキャラだから山ちゃんに一緒にやらせちゃえ!的なオチじゃないわよね!

それも考えられる案の一つよね。

…………どうしよう。

ルイス様に会うのが、マジで怖い!

「レイモンド兄様。私、ルイス様にお会いするのは、魔法学園に入学してからで良いですわ」

真っ青な顔をした私を見て、レイモンド兄様は顔を引き攣らせると

「フレイア、あまり考え込むなよ」

と呟き、そっと私を抱き締めた。

私は兄様の優しい腕の中で

(どうか……どうか……ルイス様のお声が、推しのお声でありますように……)

そう祈っていた。

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