第5話 王家の剣と盾②

そして何より、王家の剣と言われているバルフレア家と、王家の盾と言われるゼヴァランス家は、古くから親交が深い間柄だった。それ故に、幼い頃からお付き合いがあるのだが、国母となるべく教育を受けており、尚且つ甘やかされた私は、それはそれは高慢な子に育っていたのよね。

故に、前世の記憶を取り戻す前まで、フレイアは三男坊のルイスを小馬鹿にしていたのだ。

(あ~!4歳11ヶ月と30日前までの私、馬鹿馬鹿!)

どんなに悔やんでも、時は戻せないのは分かっている。

思い出す度に申し訳無さで胸が痛むのは、見た目が愛らしいフレイアに、幼いルイスは4歳の誕生日に花をプレゼントしてくれた事があった。

それなのに、4歳の私と来たら

「こんな花をもらって喜ぶとでも思っていらっしゃるの?」

そう言って、花束を踏み付けてしまうのよ!

(時を戻せるなら、4歳の自分をタコ殴りしたい位だわ!!)

今、思い出すと、ピンクの可愛らしい薔薇の花束で、きっと自分で花を切り、棘処理をしたのだと思う。

手には、包帯が巻かれていたように朧気ではあるが記憶している。

それでも彼は小さく笑い

「ごめんね」

と、フレイアに謝罪をしたのだ。

なんて事!!

今ならその手の怪我を、私が手当てして差し上げたのに。

いくは悪役令嬢だからって、ルイス様に対してフレイアは酷すぎない?

私は記憶を辿る為に記しているノートを、破りそうになりながら考える。

そして、悲しくて目に浮かぶ涙を拭う。

(そんな奴を、好きになんてなってはくれないよね)

一つ溜め息を吐き出すと、ペンをノートに転がした。

前世の記憶が戻った日、ルイス様の私を見る目は明らかに怯えていた。

謝罪したからと言って、許しては貰えないかもしれない。

それでも、私は失墜しているルイス様の好感度を上げる為になんだってしてやろうと決意した。

それこそ、ルイス様から「お前なんか大嫌いだから、近寄るな」と言われるまでは頑張ろうと。

魔法学園の先輩から、やっと名前を知る事が出来たのだから。

私はまだ5歳。

これからゆっくりと、ルイス様との関係を育てて行けば良い……そう考えていた。

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