第6話 婚約破棄って、どうしたら良いの?

 5歳の誕生日から前世の記憶を取り戻した私がまずしたのは、父親に婚約破棄のお願いをしに行ったのだ。

しかし、「そうか、そうか。よし、婚約破棄しちゃえ!」なんて言う筈も無く。

お父様は激怒して、お母様はぶっ倒れた。

そうだよね。フレイアを王家に嫁がせるのは、バルフレア家の積年の夢だったもんね。

分かるんだけどさ……、会ったことも無い王子様(ゲームの中では知っている)に嫁ぐなんて。

しかも、アティカス王子みたいに、全て揃ったキャラには興味無いのよ。

容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能。

しかも、妖精の加護を4属性だけでなく光の精霊の加護まで受けているなんて。

チートキャラかよ!って、ゲームやる度にツッコミを入れていた程だった。

しかもゲームの攻略キャラの中で、アティカス王子は1番人気でもあったわけ。

まぁ、声優が今をトキメク宮内護だし、あの甘くて優しい声で愛を囁かれたら、そりゃ~黄色い声が飛び交うって話よ。

でも私は、チート能力よりルイス様のように黒髪にタレ目メガネの方が好きなの!

例えゲームでは声が「ポポポポ」っという機械音だったとしても、それを上回る魅力があるのよ!

確かに、生きたルイス様は剣がお得意では無いけれど、その分、頭脳派なのよ!

しかも動物や精霊にとても好かれていて、ルイス様の周りにはいつだってたくさんの精霊達が飛んでいる。

それは、ルイス様が優しいからに決まっているのよ!

それにね、アティカス王子だったら、他にたくさん婚約者になりたい人が居る筈。

だったら、何も私じゃなくても良くない?って思う訳ですよ。

だから、両親がダメならレイモンド兄様にチャレンジしてみたけど、物凄い形相で睨まれた。(怒らない分、余計に怖かった)

こうなったら、直談判しか無い!と私は考えた。

アティカス王子だって、勝手に親が決めた相手より、フラソのヒロインが良いに決まっている。

そう考えて、どうしたら婚約破棄をしてもらえるのかを、あの手この手を考えて思案していた日の事だった。

 その日はルイス様に差し上げるパンを、コックのマークに頼んで作っていた。

すると、まだお昼前なのにお父様が1人の男の子を連れて帰宅したのだ。

痩せ気味で顔色の悪い男の子は、それでも愛らしい容姿をしていた。

クリクリの瞳はサファイアで、サラサラの金髪が愛らしさを引き立てている。

私は顔を見た瞬間、その愛らしさにハートを射抜かれかけたが、ハッと気付いた。

人気のある攻略キャラのアティカス王子も、サラサラのブロンドにサファイアの瞳だった。

あれだけのイケメンの幼少期だ、可愛くない訳がない!

そんな事を考えてガン見していると、レイモンド兄様がルイス様を連れてエントランスに現れた。

お母様まで、かなりお洒落して現れたもんだから、益々怪しい。

私が訝しんで見ていると

「みんな集まっているかい?この子は、私の遠縁の子で名前はアレクだ。暫く我が家で預かるから、仲良くして欲しい」

と紹介したのだ。

(アレク?そんなキャラ居たかしら?……でも、待って。アティカス王子の偽名かもしれない)

そう思って居ると、お父様がお母様をご紹介していた。

「アレク様、初めまして。妻のレイリンです」

アレクの目線の高さにかがみ、優しい笑顔で挨拶をしている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る