第2話
「……ろん、、ロン、起きなさい」
「……んあ?」
隣から聞こえてくる声で目を覚ました。
あたりは明るくなっており、窓からは陽の光が差し込んでいる。目を擦ると自然と視界も開けてきた。
窓のふちには夜に見た装飾が鮮明に浮かんでおりレースは派手な赤色。ベットもワイン色のレースが敷いてあり、映画で見るようなシャンデリアが天井にはびっしりと並んでいる。壁には金の額縁と高そうな絵画が取り付けられており、とても寝室とは思えない広さだった。
すげー、なのこの部屋。貴族じゃん。
「ちょっと、聞いてる?早く服を着なさい。食事よ」
つい目を奪われて隣から聞こえてくる声を忘れていた。
視線を横にやれば、ベットを見下ろしながら、黒い長髪を綺麗に伸ばした美女が腕組みをして凛と立っていた。特に着飾っているわけでもないのに気品を感じるのは何故だろうか。
その圧力に寝転んでいたのが思わず飛び起きてしまう。
「あ、あぁ、ごめんな。すぐ着替えるよ」
ベットから出て立ち上がると、彼女の身長がかなり高いことに気づく。自分の身長が今何センチかは分からないが、視線の高さがほぼ同じだった。ハイヒールもせずこの高さなのだから驚きである。
とりあえずジロジロ見るのもアレなので俺は端にかけてあった服を取りに行く。すると、背後から尋ねられた。
「……夜から気になっていたのだけど、あなた敬語はどうしたのかしら」
さっきまでの威圧感とは違う、鋭さを持った冷徹な声音。
「えっ、あ、敬語ですか?」
反射的に敬語で返してしまう。
「ええ、敬語。夜中突然起きたと思ったら意味のわからない質問をしてくるし。なにかしら、反抗期?」
その綺麗な長髪が細長い指で払われる。見下すような視線にとても居た堪れないことこの上ない。思わず視線を逸らして今ボタン止めるのに集中してますみたいな雰囲気を出してしまう。
しかし、一つこれで分かったことがある。それは、俺は彼女の婚約者や恋人などではないと言うことだ。いや、もしかすると尻に敷かれているだけかもしれないが。
まあ、どちらにせよ直接聞かないことには分かることもわからない。
俺はズボンを履き、やけに堅苦しい服のボタンを止める終える。そして、なるべく冗談めかして尋ねた。
「あの、俺って貴方にとってのどんな存在です?☆」
無駄にハイテンションに勢いよく振り返り様に言う。だが目の前に待っていたのは変わらず冷たい目をした少女の姿だった。
思わず泣きたくなるが、なんとか堪える。すると、目の前に浮かんでいた侮蔑の眼差しが少し変わった気がした。なんというか、見下してるというより、、感情を押し殺しているような
「何って、性奴隷以外何があるって言うの」
「そうですよね。僕なんて所詮貴方の性奴れ………性奴隷!!!??」
思わず大声で聞き返してしまう。性奴隷という言葉が少女の印象と離れすぎていた上に、それが自分のことであるということが意味分からなすぎてもはや笑ってしまう。え、てか、冗談ですよね?
「今更何かしら。その反応とても不快なのだけど」
氷塊のような凍てつく表情と声音に、嫌でもそれが事実だと理解させられてしまう。見た目や仕草、一挙一動に品を感じさせる少女がこの手の冗談を言わないことは出会って間もなくても理解できた。
「も、申し訳ないです。ちょっとした冗談というか、、あ、あのそれで、俺はこれからどうするんでしたっけ」
ここまで聞いたからには不自然に思われても仕方ないと思って尋ねる。
「……着いてきなさい」
意外にも少女は何かを諦めたような静かな声音でそう言った。俺はありがたく言われるがまま着いていくことにした。
転生したらイケメンでした〜でもなんか思ったのと違う〜 @morukaaa37
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