転生したらイケメンでした〜でもなんか思ったのと違う〜

@morukaaa37

第1話




 「んあ?」


 目覚めてすぐ違和感を感じた。


 身体を起こすと共に掛けられていた布団が落ちる。少し肌寒い。両腕で身体を擦ると服を着ていないことに気づいた。暗くてもわかる。白い肌に余分な脂肪を感じさせない筋肉。


 言うまでもなく、俺の身体ではない。


 あたりを見渡すとまだ部屋の電気はつけられていなく、細長い窓から青白い月がこちらを覗くだけだった。俺は明かりをつけるべく、ベットから立ち上がる。


 「………なんかおかしい」


 立ち上がって少し意識が戻ってきた。初めに感じていた違和感を再度覚える。


 ここはどこ?私は誰?


 いや、流石に自分が誰かは覚えている。が、この身体が何なのかが分からない。それに、今いる部屋。暗くてよく見えないが、少なくとも日本の建築式でないことだけは想像できた。


 窓の珍しい装飾を眺めつつ、状況把握に頭を働かす。すると、ベットの方から布団のめくれる音が聞こえてきた。


 「………んっ、、あれ、起きたの?早いわね」


 「………あ、ああ、おはよ」


 全く気づかなかった。


 どうやら俺の隣にもう1人寝ていたらしい。声からして女性だろうか。寝起きだからか声のトーンは低かった。そのせいか、落ち着いた印象を感じる。


 「さっきまでアレだけ動いたのに、やっぱ体力だけはあるのね」


 「え?ああ、まあ……」


 現状把握のために働かせていた頭が急回転する。アレっていうとやっぱアレだろうか。いや、確かに状況的にはアレだろうけど、


 「はぁ……まだ遅いし私は寝るわ」


 ため息と共に彼女が上げていた身体をゆっくりベットへと戻すのが分かった。俺は慌てて質問をする。


 「あ、ちょっ、ちょっと待ってくれ」


 「なに?」

 

 少し不機嫌そうに聞き返される。彼女と俺の関係も知りたかったが、その前に聞いておきたいことがあった。


 「俺、カッコいいかな?」


 一瞬、時が止まった気がした。


 すぐに、ベットのシーツの擦れる音。それと共に大きめのため息が聞こえてくる。彼女は横になりながらこう言った。


 「外見だけでしょ」


 今度こそ本当の静寂が流れる。彼女はかなり眠かったらしく、かすかな吐息と布擦れの音だけが聞こえていた。


 外見だけでしょ


 これはつまり、少なくとも見た目はイケメンということである。身体は屈強でしかもイケメン。


 「くっくっくっ……、とりま寝よ」


 俺は満足して寝ることにした。

 




 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る