ポスト・アポカリプスは生き残るもの!!

神無月《カミナキツキ》

1ST「ゆるり旅」

ザクッ・・ザクッ・・


瓦礫で覆われた元々は道路だった道を歩く。


「あ! あそこだったら美味しい物残ってるかな!」


僕の視線の先には壊れかけたケーキ屋の看板。

文字はもうかすれて読めないけど、隣に描かれたケーキの絵があるからきっとケーキ屋さんだよね!。


僕は元気よくケーキ屋に駆け出した。


「わー……中に入ったはいいけど……まあ予想はしてたさ……」


案の定、店内に広がっていたのは割れたガラス片や瓦礫と僅かに形を残したケーキ棚があるだけ、ケーキはおろか棚を見れば中身は空っぽだ。


「ま、いっか! もうちょっと奥に使えるものが無いか探そっと!」


そう思って僕はレジ横から店員側スペースに入る。

やっぱり戦争の影響か、瓦礫のせいかで殆ど使えそうな機械製品もダメになっている。

もうちょっとそのまま使える物もあると思ったんだけどなぁ。


「あ、これって」


瓦礫の下敷きになっていたが僕は見逃さなかった。

余計なコンクリート片や土埃を払い改めて確認する。


「やっぱり!! やったね! 美味しい物は見つからなかったけど当たりだ!!」


僕が手にしたのは一冊の漫画本だ。

前に見つけた本屋の中で見つけたマンガという物に僕ははまってしまったのである!

子供の頃ママが呼んでくれた絵本なんかより沢山の絵があってカッコイイから好きなのだ。


そして今手に持っているのは。

『ワンピース』というマンガの九十九巻だ。九十八巻までは本屋で見つけていたから続きが気になって仕方なかったけど・・・


「やっと見つけた!」


誰かが読んでた途中だったのか、本のページの中間ぐらいに折り目がつけられている。


「折り目・・・まあいっか!もうここに居るのは僕だけだし!」


僕はそうして探していたマンガの巻を見つけたお陰で気分が上り軽い足取りで探索を続けた。


────2029年世界大戦の勃発────


中国の本格的な台湾侵攻を皮切りに世界各国が戦争を始めた。

開戦から一年も経たずに核兵器が使われた。


ロシアがアメリカへ放った三発の核。


そこから一気に世界は滅びの一途を辿った。

世界各国が核を使うことを躊躇わなくなり、世界大戦は地球の滅ぼす核戦争へと変わった。


各国がシェルターの建造を始め僕の両親もシェルターに逃げ込んだらしい。

然し、ダメだった。

シェルターは核の衝撃は防げても放射線という物が防げず世界中で汚染による死んだ人が急増した。

殆ど常に空を飛び交い続ける核やミサイルのせいで地上はボロボロになり。シェルターの中ですら放射能汚染による地獄絵図。

そんな最中僕は産まれたらしい。

勿論僕にその当時の記憶はないけれど両親が僕をお医者さんに見せると、

どうやら放射能の影響で僕の身体は放射能の影響を受けない身体に変異していたらしい。


それから直ぐに戦争は終わった。

いや、正しくは戦争の継続が出来なくなった。

各国は最早、国としての機能は無くなり、

生き残ってる人ですら、殆どは汚染により死にかかっている。


もう人類は殆ど滅ぶことが確定していた。

僕を除いて。

そのことを悟っていたのか、僕の両親は僕に沢山のことを教えてくれた。


水の濾過方法

生き物の狩り方

銃の扱い方

生物の構造

食べられる物の見分け方


他にもいっぱい教えてくれた。

同じシェルターに居た人も僕に沢山のことをしてくれた。


退役軍人だったロルトおじさんは沢山遊び相手になってくれたし。

新任教師だったリカナお姉さんは算数と国語を教えてくれた。

エンジニアだったアキラお兄ちゃんは色々な物を作って僕にくれた。


だけど、色々なことを教えてくれたみんなはもういない。

当たり前だ、子供の僕にだってあの頃のみんなが限界の中、

僕の為に頑張ってくれてたこと位わかる。


両親が言っていた、私たちが皆居なくなったとしても貴方は独りじゃないと。

結局僕が九歳になるとき、最後まで僕と一緒に居てくれた両親も死んだ。

だけど僕は寂しくはないのだ。

両親が独りじゃないと言ってくれたから。


──────


「さてと、結局ケーキ屋で見つかった使えそうなのは、ワンピースと懐中電灯、モーターと壊れたハンドミキサー……」


まあ・・悪くはないからいいかな。


「そろそろ今日の寝れそうな場所探さないとなぁ……」


見上げると青空で晴れ渡っていたはずの空は何時しか薄い紫と橙のグラデーションに変わり日暮れの太陽が誰もいない地平線に沈んでいるのが見える。


僕は背負っていた大きめのバックパックを開き、中から高光度の電灯を取り出した。


「ま! もし寝る場所探し中に暗くなっちゃったら大変だからね! 備えあれば……何とかって言うし!!」


空が暗く堕ちる中、道路を歩く、廃車や千切れた電線を時々漁りながらのんびりと歩く。

そんな僕の視界の端に何か動くものが映った。


「え、何?」


動いたものの方を見れば崩れた大きな病院があった。

その病院に付いた壊れた自動ドアの奥、崩れた待合室の椅子の影に揺ら揺らと蠢く影が居た。


「おーい!!」


僕の声を聴いたのか影が動きを止める。

壊れた椅子の瓦礫を退かし、その影が顔を上げる。

丸みを帯びたキューブの様な見た目に、動物を模した四脚の模擬足をつけられた小型のロボットだ。

やっぱり僕の声に反応してたようで、おぼつかない足取りでこちらに歩いてくる。


「君、怪我してるの?」


ロボットの脚を見れば片脚の付け根が外れかけている。

どうやらそのせいで足の接続がうまくいっていないようだ。


話しかけた僕に返す様にピピッという電子音を返してくる。

身体の中心についた一眼レフの様なカメラが僕を見つめる。


「分かった、ちょっと待ってね!」


背負っていたバックパックを開き使えそうな物を探す。


「えっと、ドライバー、違うか、レンチ……これならいけるかな」


レンチと数本の電線を取り出して、ロボットの脚を見る。

付け根のジョイントが外れかけてワイヤーが露出していた。

僕はロボットの脚に触れる。

ロボットは少し痛がる様に脚を僕から遠ざけた。


「あ、コラ! 脚見せてくれないと治せないだろ!」


僕の声が届いたのか渋々脚を見せる。

ジョイントが外れかけてるから慎重に……


僕は慣れた手つきでレンチを使い、脚の外殻を外す。

やっぱり、間接ジョイントを止めるボルトが緩んでる。

ワイヤー自体は……傷ついてないな。


ボルトを締め直し、ジョイントからワイヤーが見えてないかを確認して外殻を付け直した。


「よし! これで大丈夫……な筈!」


ロボットは直した脚をグイングインと動かすと僕にすり寄ってきた。

どうやら懐いたらしい。


「よしよし、お前名前はあるのか?」


ロボットはピピッ! と鳴くだけで、言葉は話さない。


「そりゃそっか、うーんじゃあ、そうだなぁ」


手を顎に当て考える。

ロボットに名付ける名前・・


「そうだ!、ロボットだからボット!!お前の名前はボットだ」


僕がそう言うとボットは喜ぶように飛び跳ねた。


「そうか嬉しいか! それじゃ今日からは一緒だな! ボット!」


ボットは僕の周りをぐるぐると回り、最後にピピピ!! と鳴いた。


「それじゃとりあえず今日は休むことにするかぁ!」


バックパックの中にあるキャンプ用のテントが入った袋を取り出した。

だが、そのテントを入れた袋を見た途端、ボットがピピッ、ピピッ、叫びだした。


「うわッ、どうしたボット!?」


ボットはその電子音を鳴らしながらテントの入った袋を突き飛ばした。


「ちょっと!?」


吹っ飛ばされた袋を見て放心してしまった。


《───放射能レベル生命維持危険値を確認───》

《プロトコル2を実行》

《効果を確認・・》


ボットが突然喋った……


「ボットって話せるの!?」


僕が驚き話し掛けると再びボットはピピッという電子音で返した。


「って、やっぱり話せない?」


僕がそう言っても、ボットはピピッというだけで言葉を発しない。


「やっぱり話せないのかなぁ・・でもなんでさっき言葉を話したんだろう」


《効果確認完了》

《汚染レベル:98.3》

《生命維持不可能状態までの汚染の進行と判断》

《プロトコル6を実行》


また喋った・・


「って、生命維持不可能ってどうゆうこと?」


僕がそう言っているのもつかの間、ボットは急に僕に擦り付き懐くような仕草を強くする。


「どうしたの?急にすりすりして」


僕の言葉も無視して擦り付き続ける、何となく死にそうな飼い主にくっつく犬に見えた。


「大丈夫、僕は死ななないよ」


ボットはピピッと鳴くと静かに立ち止まり僕を見た。

本当? と心配しているようにも見える。

金属の肌を優しくなでるとボットは落ち着いた様子で横に並んだ。


「じゃあ取り敢えず飛ばしたテント持って来て開こっか」


僕はテントの袋を持って来て中の骨組みや布が折れたり敗れてないか確認する。


「よし、異常は無いな」


骨組みを布の引っ掛けに通し。テントを展開する。

子供一人分には大きいぐらいの立派なテントが出来た。


「大きいなあ、これ何人用だろう・・」


テントの入っていた袋を確認すると、

野戦用即席天幕弐式:三人用と書かれていた。

多分ロルトおじさんの物だったんだろう。

僕は少し感慨深い気持ちになった。


「よし! ピンも打ったし、中に入ろっか!」


ボットにそう言って入口のジッパーを開く。

中は外から見た時より更に広く感じた、若干暗いけどこれぐらいバックパックに入れてるランタンを使えば十分明るい。


「それじゃあご飯作らないとね」


バックパックには一昨日拾った缶詰がまだ十分ある。

僕はその中から三個缶詰を取り出し、同じくキャンプ用のガスコンロも取り出す。


「うーん、そろそろガスも少なくなってきたなぁ……」


一応廃コンビニで拾った着火用固形燃料はあるから最悪キャンプファイヤーを作ろう思えば作れるが……

いちいち、薪替わりの可燃ごみを探してくるのもめんどくさい。


「またガス缶探さないとなぁ」


いま付けている少ないガス缶と予備の最後のガス缶を見ながら、そう言った。

コンロの上に網を乗せ、蓋を開けた缶詰を並べる。

コンロの横についたガス調整用のネジを捻り、着火トリガーを押した。

カチッ!という音とともに青い炎が湧く


「あったかーい……これが文明の炎かぁ……」


空は到頭とうとう暗くなり文明の光が無い夜空には沢山の星が見えた。

ぼんやりと星が沢山集まって見えるあれが天の川という奴なのだろうか・・


「綺麗だなぁボット・・」


ピピッ! と呼応するようにボットも鳴いた。

こんな綺麗な夜空を僕一人だけが見れるんだ……

僕だけの夜空……とっても良い響きだ!!


「あ、もうそろそろいいかな」


僅かに煮立った様な泡立ちを見せる缶詰を見て火を弱めた。

バックパックから箸を取り出し、熱々の缶詰を軍手を履いた手で取る。

今日の缶詰は焼き鳥とサバの水煮と秋刀魚の味噌煮の三種だ。

湯気が湧き立つ缶詰に箸を入れ焼き鳥を掴む。


「美味しそう」


照り焼きのタレの香りが鼻を通り食欲を刺激させる。

ふぅふぅと息を吹き、熱を冷まして口に放り込んだ。


「美味しい!! 大戦前の人はこれを毎日食べれたんだから幸せだよなぁ」


シェルターでは乾パンとジャガイモを潰して調味料を加えたマッシュポテトばっかりだったからとても新鮮で美味しい。

僕はこんな美味しいものでも探して集めないと食べれないのだから不公平だよなぁ。

少し美味しさに頬を緩めながらそう思った。


「ん? ボットも食べるか? って言っても、お前の口って何処?」


近寄ってきたボットにそう言ったは良いものの、生憎あいにく、顔の正面には大きいカメラみたいな眼があるだけで口は見当たらない。

ボットは僕の言葉を聞くとピピッ!と鳴いて、頭の上が開いた。


「あ、そこがボットの口なのか!」


僕が箸で焼き鳥を掴んでその穴に入れる。

ボットに味が解るのかは分からないけど、ピピッ!と鳴いていた。


《バイオ燃料の注入を確認》

《分解発電炉による充電を開始》


またボットが喋った……


「お前はほんと、喋れるのか喋れないのか分からないやつだなぁ。」


そんなことを言いながら僕は缶詰三個を平らげた。

全部違った味でとても美味しかった。


「さてとそろそろ寝ようかな……あ、でもその前に」


バックパックを漁り、僕は大きな箱型の機械を取り出す。


「アキラ兄ちゃんがくれたこの・・日光・月光対応型光発電池を置いとかないとね」


太陽の光でも月の光でも発電できるから暇な時は点けとけって言われてから、

僕は寝る前に起動して蓄電池に電気を貯める事にしているのだ。


「月の光でも発電できるのってハイテクだよなぁ。」


アキラ兄ちゃんが作ったって言っていたけど、やっぱりアキラ兄ちゃんは凄いや。

僕はテントの傍に発電地を持って行き、発電ボタンを押す。

発電地の上部が開き中から発電用にソーラーパネルが展開する。


「これで良し! じゃあ、今日は寝よっか! ボット」


ついて回るボットにそう言って、テントに入り寝袋を取り出した。

ボットも隣に座って脚を折り畳む。


「お休み、ボット」


僕に返すようにピピッとボットも鳴き、段々と来る眠気に促されるまま、

今日を終え、眠りについた。

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