第26話 ~Happy Christmas Eve~ 2/4
「ちょっとこれ、短くないですかっ⁉」
「何言ってんの、美七海ッち。まだまだ私には及ばないよー!」
クリスマスイブ。24日夜。
泰史に手渡されたミニスカサンタの衣装に着替えた美七海は、半分ほど露わになった腿の心許なさに抗議の声を上げたのだが、より短いミニスカサンタの衣装を身に着けている亜美に一蹴された。
美七海のミニスカサンタの衣装は赤。
亜美のミニスカサンタの衣装はショッキングピンク。
ともに、袖や襟、スカートの裾が白のフワフワで縁取られている。
「私も麻美さんと同じ衣装が良かったです……」
そう呟いた美七海の視線の先の麻美は、ロンスカサンタの衣装。色は黒に近いグレー。やはり、袖や襟、スカートの裾が白のフワフワで縁取られている。
「あらぁ、美七海さんにはロングスカートよりミニスカートの方が、この後なにかと都合が良いんじゃないかしら?ねぇ、やっくん?」
「はっ⁉なっ、なに言ってんだよ麻美姉っ!へへ変なこと言うなって!」
麻美に図星を突かれ動揺を隠せない泰史はひとり、トナカイの衣装。
全身茶色の着ぐるみで、頭にトナカイの角を付けている。
「あらぁ、照れちゃって。可愛いトナカイさんねぇ、やっくん」
「亜美姉が絶対これ着ろって言うからっ!」
午前中、美七海が部屋で準備をしている間、泰史は2人の姉と近くのド○キへ買い出しに行っていたのだ。
そこで、亜美から衣装を指定されたらしい。
「俺もサンタが良かったのに……」
「サンタは3人いればいいんだよー、やっくん。トナカイさん、超似合ってるし。ね、美七海っち」
「そうですね」
「美七海ちゃんまで……」
俺の計画が……
と小さく呟き、泰史はガックリと項垂れた。
サラダにチキンにピザ、シャンパンにケーキと、テーブルの上に所せましと料理を並べ、クリスマスパーティは賑やかに始まった。
泰史の幼い頃の暴露話やテーブルゲーム。
泰史と2人だけのクリスマスもそれはそれで楽しいけれど、4人で過ごすクリスマスもとても楽しいと、美七海は感じていた。
けれども、この4人で過ごすクリスマスは、今年が最初で最後。
亜美も麻美も、そんな様子は微塵も見せてはいないけれど、美七海はふとした拍子に思い出しては、泰史の楽しそうな笑顔に胸の痛みを堪えていた。
「ていうか麻美姉、また糸切りまくってただろ?」
一息ついたところで、思い出したように泰史が言った。
「ド○キまでの往復だけで、どんだけカップル引き裂いてきたんだよ?」
「あらぁ、そんな人聞きの悪い事言わないの、やっくん。私はね、遠からず別れる2人や、悪縁で結ばれた人達の糸を、切ってあげただけよ?」
「物は言いようよね。麻美ったら嬉々として、ハサミパチパチしてたもんねー。私、見てたんだから」
「フフフ……いいじゃない、最後くらい好きなだけ切ったって。バチは当たらないと」
「最後?えっ?麻美姉もうそのハサミ使うのやめるの?」
キョトンとした顔の泰史の言葉に麻美は一瞬ハッとした表情を浮かべたが、すかさず亜美が言葉を挟む。
「さて、宴もたけなわとなってきましたところで、亜美&麻美のマジックショーの開幕でーす!」
「よっ!待ってました、お姉さまっ!」
何が始まるかは分からなかったものの、泰史の気を逸らそうと美七海もすかさず合いの手を入れる。
「えぇっ、姉ちゃん達、手品なんてできたっけ?」
そんな事を言いながらも、嬉しそうに亜美の方へと顔を向けた泰史を見て、美七海はホッと胸を撫でおろした。
『ありがとう、美七海さん』
距離的に聞こえるはずは無いのに、美七海の耳に、少し離れたところに座っている麻美のささやき声が届いた。
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