第27話 ~Happy Christmas Eve~ 3/4

 チャラララララ~ン♪


 マジックショーではお決まりの音楽、『オリーブの首飾り』がどこからともなく流れてくる中、亜美と麻美は互いの手を取り、泰史と美七海に向けて深々と頭を下げてお辞儀をする。


「では、麻美のマジックのお披露目です。ちなみに私は助手ね。ご覧あれ!」

「はい、では僭越ながら私のマジックをお披露目します。お二人とも、10秒間目を瞑ってくださいね。そうするとあら不思議。目を開けた時に、今まで見えていなかったものが見えるようになります。いきますよ?では、目を閉じて。ワン・ツー・スリー……」


 麻美に言われるままに、泰史と美七海は目を閉じ、おとなしく麻美のカウントに耳を傾ける。


「……エイト・ナイン・テン!はいっ、目を開けてください」


 麻美の指示通りに目を開けると、そこには……


「あっ、糸っ!」


 亜美、麻美、泰史、美七海の間に、それぞれを繋ぐ糸が見えた。


 亜美と麻美の間には、緑色の糸。

 亜美と泰史、麻美と泰史の間には、青い糸。

 亜美と美七海、麻美と美七海の間には、黄色い糸。

 そして。

 泰史と美七海の間には、赤い糸。


「それぞれの糸の色の意味を説明します。まずこの緑色の糸は、ツインソウルの相手を結ぶ糸です。私と亜美は双子なので、当然と言えば当然ね。次にこの青い糸。これは、心を癒してくる相手を結ぶ糸です。亜美も私もやっくんには心を癒してもらっているし、やっくんもそう感じてくれていれば嬉しいのだけれど。そしてこの黄色い糸。これは、自分を高めてくれる相手を結ぶ糸です。私も最初は何故美七海さんとこの色の糸で結ばれているか分からなかったのだけれど、色の意味を調べて納得したのよ。美七海さんのお陰で確かに亜美も私も自分自身を高める事ができた気がするの。美七海さんも同じように感じてくれていると嬉しいわ。そして最後にこの赤い糸……は、言うまでも無いわね。やっくんと美七海さんは間違いなく、運命で結ばれている相手。これからも末永く仲良くしてね」


 麻美の説明に、美七海は泰史と共に驚きを持って聴き入っていた。

 信じていなかった訳ではないが、こうも目の前にくっきりと糸を見せられてしまうと、人と人とは色々な関係、色々な糸で繋がっているのだということを信じざるを得なくなってしまう。


「でも、良かったよねー、麻美。この糸の色の中に、黒いのが無くて」

「そうね、黒い糸は、悪因縁を持つ相手、憎んだり嫌ったりしている相手を結び付けてしまう糸だもの。今日はたくさん、黒い糸を切ってきたのよ、私」

「とか言って、まだ赤になりきってないピンクの糸とかも切ってたりしたんじゃないの~?」

「あら、どうしてわかったの?」

「えっ、うそ……冗談で言ったんだけど」

「あら、そうだったの?私も冗談よ、フフフ」


 にこやかに微笑む麻美を引き気味の顔で見る亜美だったが、気を取り直したように泰史と美七海の方へと向き直る。


「では改めまして。これから私たち、亜美と麻美の体が少しずつ薄くなり、最後にはなんと……消えてしまいますっ!」

「実はね、私たちもこれは初めてやる事だから上手くいくかどうかわからないのだけれど、上手く行ったら盛大な拍手をお願いね」

「消えるって、姉ちゃんたちいつも出たり消えたり得意なくせに。何言ってんだよ、もう」


 何も知らない泰史が、呆れたような声を上げる。

 亜美は困ったように顔を歪めたが、麻美は淡々と告げた。


「これはいつもの『消える』じゃないのよ、やっくん。だから、良く見ていて。私たちの最後の姿を」

「……え?最後?」


 たまらず、美七海は隣に座る泰史の手を握りしめる。


「どうしたの、美七海ちゃんまで。なんだよ、みんななんか俺に隠して」

「じゃ、はじめはこの糸からね!麻美、よろしく~♪」


 泰史の言葉を遮るように、亜美が明るい声を上げて、麻美と繋がっている緑色の糸を指でつまむ。

 いつの間にか、麻美の右手には、鈍い銀色の光を放つ小さなハサミが握られていた。

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