第2話:まちに出る

日が傾きはじめた頃、私は目を覚ました。

どうやら、いつのまにか泣きつかれて眠ってしまったらしい。


なんかつかれちゃったし、なにも考えたくないや。

そう思ってしばらくボーッとしていたら、グ~ッとお腹から大きな音がなった。

そういえば、朝からなにも食べてないんだっけ。


いつもはお兄ちゃんがごはんを作ってくれたけど、今日はお兄ちゃんが作ったごはんは食べていない。


7歳の私に料理なんてできないから、食べ物は買うしかなさそうだ。


......おなかすいたな。


私は、お兄ちゃんがいつも仕事に持っていっていたカバンを持っていくことにした。

カバンの中にはちょっとした薬やお金が入っていたので、このお金を使って町で何かしら買おうと思う。


家は路地裏にあるので、町までは少し距離がある。

私は家を出ると、ひたすら町まで歩いた。



歩き続けて5分ほど経った。


辺りにはあたたかく光る街灯がいくつも並び、だんだんと暗くなっていく町に光をともしている。


きれいだなぁと思ったが、私の心は満たされなかった。


店を探していると、どこからかほんのりと甘いにおいがした。


やさしくて、やわらかいにおい。


そのにおいをたどっていくと、小さなパン屋にたどりついた。


「いらっしゃいませー!あら、かわいいお客さんね。どうしたの?」

店にはいると、ふわふわの茶髪をゆるく結んだ、きれいなお姉さんが店の奥からでてきた。


「あの、パンください!」

「わかりました。もうすぐできるから、焼きたてのパンをごちそうするわね!」

「あ......ありがとう」


私は椅子にすわって、パンができあがるのを待っている。


やさしい人がいてよかったという安堵と、これからどうしようかという不安が混ざって、複雑な気持ちがこみあげてくる。


「焼けたわよー!って、どっ、どうしたのっ!?泣いてるよ!?」


「えっ......」


気づけば、私はまた泣いていた。


「なにがあったのかわかんないけど、覚めないうちにこれ食べなさい。お腹もふくれるし、少しは楽になると思うわよ?」


そう言って、お姉さんは私にパンを差し出した。


私はそれを受け取り、おおきく口を開けてほおばった。

おおきく口を開けても少しずつしか食べられず、時間もかかってしまったが、それでもお姉さんはやさしい目で私を見守ってくれた。




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