第115話 (ステータス表示あり)
【名も無き洞窟】にて。
黒井は自身のステータスを確認してから、ため息を吐いた。
そこに表示されている雷の陣営が、また知らぬ間に増えていたからだ。
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【黒井賽】/『黒井賽』
種族 :鬼人
職業 :治癒魔術師/裏回廊の支配者
レベル:135
筋力 :1450
器用 :1530
持久 :1300
敏捷 :1500
魔力 :1900
知力 :1850
精神 :1950
運 :150
《スキル》
回復魔法・覚醒魔法・治癒術・抗体術・剣術・弓術・鎚術・槍術・反射・制限解除・鬼門・雷の支配・鬼の芽・格闘術・殺気・雷付与・無限軌道・隠蔽・霊験投影:雷紋・飛雷神・鬼の外套・我道・冷酷・裏鬼門・傀儡の副腕・救済者の加護
《称号》
魔眼08・ゴブリンスレイヤー・避雷針・雷の眷族・鬼の王・殺戮者・深淵への挑戦者・戦車・雷サージ・雷帝・救済者
《雷の陣営》
拠点数:23
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「――それで……なんで勝手に陣営を増やした?」
やがて、冷たい視線が一体のオーガを貫く。
オーガは跪いて従順な態度を示した。
『王が、真の王である証明をするためです』
「真の王だと?」
『はい。〝向こう〟では、軍勢を従える者たちが王を名乗り傲慢に振る舞っております。そんな者たちを一掃し、我が王こそが王であるのだと証明するため、王も軍勢を手にしなくてはならぬと考えました』
「王、王って……頭が痛くなってくるな。そんなお前の王は、配下の一匹ですら制御できてないってのに」
『なんですと……! 王の言うことを聞かぬ輩がいるのですか……!! そいつはどこですか!! 今すぐに成敗しなければなりません!!』
「お前だよ」
『わ、わ、私ですかぁああ!?』
目の上に手をかざし、キョロキョロとあたりを見回していたオーガは、黒井の指摘にどっひゃーと両手をあげて驚いた。
もはやわざとらしすぎる反応だが、黒井の経験上彼らはいつだって本気だと知っている。そして……本気だからこそ手に負えない。
「今後陣営に関しては、俺の指示なしで増やすことを禁止する」
『な、なぜですか!?』
「お前が勝手に制圧してるダンジョンってのは、既に人間の手で管理されてるダンジョンだからだ」
『に、人間がダンジョンの管理を……?』
「そうだ。だから、勝手に他のダンジョンに攻め込むことは禁止だ」
しかし、オーガは返事をする前に首を傾げる。
『人間がどうやってダンジョンを管理するのですか?』
「ダンジョンコアを破壊せずに、ゲートから魔物が出てこないよう数だけ減らすんだよ」
『なぜ、ダンジョンを攻略しゲート自体を消さないのですか?』
「人間には居住地があるんだ。突然現れたゲートによってその地を追われるよりは、既に現れたゲートを囲って維持したほうが危険な場所を明確にできていいだろ? それに、ランクの低いダンジョンを維持すれば、その周辺にゲートが突然出現することはないし、それは高ランクのゲート出現を阻止することに繋がる」
そう説明しても、オーガはやはり疑問符を浮かべたまま。
『私には不思議でなりません。なぜ、わざわざ敵が攻め入ってくる要因を残したりなどするのか』
とはいえ、オーガの疑問は最も。
「まぁ、普通は出現したゲートを攻略するのが普通ではあるな。だが、低いダンジョンでのレベル上げもできるから悪いことばかりじゃない」
事実、黒井が鬼になるまでコツコツとレベル上げできたのは低ランクゲートを維持してきたお陰だった。
『なるほど……危険を排除せずに共存することで自分たちが強くなる要因を残したということですか』
「そこまで考えてたかは知らないが、人間は安易にダンジョンを攻略することだけを選ばなかったんだ」
そう言ってから黒井は立ち上がると、その場で鬼門を開く。
「ついてこい」
『どちらへ?』
「そろそろお前たちを統制できるリーダーをつくろうと思ってな」
『リーダー……』
オーガはそう呟いてから、真剣な眼差しを黒井に向けた。
『リーダーというのは、王に最も近い配下ということでしょうか?』
「別にそういうわけじゃないが、お前たちは俺の目の届かない場所にいると何をしでかすか分からないからな。それを制御できる者を置くことにしたんだ。……まぁ、俺の提案じゃないんだが」
『なるほど……ちなみにリーダーというのは、王の次に強い者がなれる地位で間違いありませんか?』
オーガの問いに、黒井は呆れた表情。
「そういうのだけ鋭いんだな……。ああ、今からお前には戦ってもらう」
『腕が……鳴ります』
そう言ってオーガがポキポキと鳴らしたのは指。
『戦うのはあの三人なのでしょうね』
「お前がどの三人のこと言ってるのか知らないが、たぶんそうだろうな」
そして、黒井は鬼門に入る直前、「あぁ」と思い出したように声を漏らす。
「一応言っておくが、戦ってもらうのは
◆
薄暗い空間にコツコツと靴音が響いた。その反響から、そこはかなり広い空間であることが窺える。
やがて靴音は、その主が冷たい床に跪いたことでピタリとやんだ。
「――先のランキング1位は支配者で間違いないか」
響く声に跪いた者は顔を上げた。しかし、周囲が薄暗いことと頭から被っているフードのせいで顔までは見えない。
それでも、「はい」と返した声から、彼の素性は男だということがわかる。
「おそらくは、雷の支配者でしょう。角を持つ魔物しか支配できない汎用性のない力を持つ支配者です」
「では、〝ゲートの破壊者〟にしか成り得ない存在ということか」
「話によれば破壊されたゲートはランクAのみで、あとはアビスゲートで獲得したポイントのようです」
「ふむ……それだけで1位まで上り詰めるとは信じがたいな。嘘の可能性は?」
「直近で低ランクゲートが立て続けに攻略された場所はありません。だからこそ1位の特定が難しかったのです。そもそも低ランクゲートをいくつも攻略したからといって得られるようなポイントでもありませんでした」
「今後、計画の邪魔になりそうか?」
その質問に、跪く男は逡巡していた。
「まだなんとも言えません。話が通じるのなら、ゲートの管理者となる可能性もあるでしょう」
「ふむ。では、雷の支配者はお前に任せよう、石の支配者よ。邪魔な存在であれば今のうちに消してしまってもよい」
「……仰せのままに」
「我々人類は愚かな迫害の歴史によって力を持つ血を絶やしてきた。しかし、神々の戦争が始まり、人類は弱まっていた力を取り戻すチャンスを得ることができたのだ。我々が人類という聖杯に魔力を満たせるまで、この戦争は長引かせなければならない。そのために、〝ゲートの破壊者〟となり得る芽は摘んでおかねばならぬ」
「わかっています。この20年で、多くの人類が本来持っていた力を取り戻しました。しかし、それでもまだ聖杯が満たされたとは言えません。人類が真に目覚めるときまで、扉は開いたままであるべきでしょう」
「我々の計画において最終的に必要なのは、血の支配者と夢の支配者のみだ。その力だけが唯一、人を支配することができるのだからな」
男は頷くように礼をすると、やがて立ち上がり踵を返して歩きだす。
コツコツと鳴り響く靴音。やがて、十分に離れた所で男はため息を吐いた。
「――邪魔なら消してもいいって……あんな化け物ほんとうに殺せるのかね」
そして、先程までの雰囲気と打って変わり、面倒くさそうにやれやれと肩をすくめてちいさく呟く。
「まぁ、話が通じることを祈ろうか」
それでも男が歩みを止めることはなく、楽観的な思考とともにその場を立ち去った。
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