第39話 青空呼人 ①

 最近、外での活動を頑張りすぎた。


 ヒナタの勧めもあり、今日は部屋で小ネタの紹介と質問を受ける日にした。


「題して~、地味ネタ&質問コーナー!」

「「はじまりまーーーす!」」


〈地味と自覚してて草〉

〈質問、楽しそう〉

〈青空くんを丸裸にしてみせますぞw〉

〈節度ある行いを!〉


 みんなノリがいい。今日は楽しめそうだ。


「では、地味ネタから。モンスターの〝呼び寄せ香〞ってありますよね。あれ、水にけておくと、効果がうすまり長持ちします」


〈へぇ~!〉

〈へぇ〉

〈宣言通りに地味w〉

〈へぇ~しか出てこん!〉

〈ま、まじか。地味に磨きがかかっているよ〉

〈くぅ~、これよ、これ!もっと地味なのくださいな〉


 地味だけど参考にはなったはず。そう信じて次にいく。


「ぎゃ、逆にモンスター避けの魔道具は、180cmの高さに設置するのが一番効果的です」


〈へぇ、気にもしなかったよw〉

〈おら、足元に置いていたよ〉

〈試してみようっと〉

〈本当なのか?メーカーによって違うのでは?〉


「はい、どれも原理は一緒なので効果範囲も一致します。あっ、でも一番なだけで、劇的にではないですよ」


〈でしょうね、地味ネタですから(笑)〉

〈それでも有りがたいです、青空王子〉

〈はやく質問コーナーいきましょうよ笑笑笑〉


 いやいや、まだネタで引っ張らないと俺の身がもたない。

 質問コーナーだと、変な方向にいくのは見えているからな。


「えー、次は」


〈質問~、片刃でも白黒石で研げますか?〉


 こういうのは良い。ちゃんと拾ってあげなくちゃ。


「はい、どんな刃物でも復活します。でもあれは研いでるのでなく、欠けた部分を補修しているのです。だから研いで斬れなくなるって、錯覚をおこさないで下さい」


〈丁寧にありがとうございますw〉


 次々と質問がくるが、まだネタタイムなので次の話題へといく。


「植物系のモンスターですが、早朝に倒すとその身はより美味しいです。特に野菜系のモンスターで鬼オン、長ネギま、ぶちぶちトマトは格別ですよ」


〈朝とれ野菜かよw〉

〈そんなモンスターがいるとは草〉

〈夜の冷気で身がしまる~~~〉

〈時たま、青空くんの頭の中が心配になるよ〉

〈しつも~ん、マタンゴもおいしくなるのか~~~、おしえろ~あおぞら~笑笑〉


 ピキッ!


 意地悪な質問はスルーします。

 というか、反応すると吐きそうだ。


 だけどこの手の質問者はしつこいのが多い。

 案の定、面白がっている。


〈おしえろよ、あおぞら。マタンゴはどうなるんだよ?くってかんそうきかせろよ〉


「きみ……力丸だろ?」


〈ちがう。ぜったいにちがう〉


「いや、ひらがなが多いし、君の姿が丸見えだ」


〈ちがうって。俺はあんなかっこ良くない〉


 フッ、比喩なのに。これで確定だな。


「ID変えてもバレバレだよ。またブロックされたくなかったら、大人しくしていなさい。解ったかい力丸?」


〈うっせえ、バーカ。にどととくるかよ、こんなところ。ばかばかばかばか!〉


〈また力丸か、懲りてない〉

〈撃沈乙〉

〈煽るとムキになるから止めておけ笑〉


「青空くん、そろそろ質問コーナーにいこっか?」


 ヒナタにうながされると、コメントがずらずらずら~と流れ出す。


〈ずばり聞きます。2人は付き合っているの?〉

〈教えて、告白したのはどっち?〉

〈青空~、俺のヒナタちゃんに手は出していないだろうな?〉

〈青空くん、俺をお嫁さんにしてくれませんか?〉


 予想通りの展開に、慌てることなく答えていく。


「付き合ってません。なので告白もないです。ゆえに手をだすのもないです。それと未成年なので結婚はむりです。以上!」


〈淡々としてて草〉

〈これは読んでいましたねw〉

〈質問者の負けだな、笑〉

〈慌てない青空くんなんてつまらん!〉

〈じゃあ、青空くんはヒナタちゃんのことをどう思っているの?好きじゃないの?〉


「もちろん大事なパートナーだよ。好きじゃなきゃ一緒にやっていないよ」


〈えっ!〉

〈えっ!〉

〈コクったw〉

〈さらっと愛の告白をしたよ、すげーー!〉


 えええええ、そうじゃないのにコメントが大盛り上がり。

 否定しても聞いていない。


 どうしようかとヒナタを見ると、なんだか潤んだ瞳だ。

 それに頬をあからめて、口をすぼませている。


 視聴者からは見えないが、口の動きが〝ありがとう〞と言っている。


 こ、これはもしかして……。


 思わずうなづき、こちらこそと返してしまった。


〈おいおい、なんで無言なんだよおおお!〉

〈やっぱりじゃねえか!〉

〈うそだろーーー、やぶ蛇だった。うわーーーん!!〉


「い、いや、そうじゃない」


〈そうに決まっているよ!〉

〈おめでとうw〉

〈えっ、いまのでカップル成立?〉

〈隠されるより余程気持ちいい〉

〈お似合いですぞ、ぐすん〉


 このあと一時間ほどこねくりまわされ、疲労困ぱい。

 色々と他の話題へとふってくれる人もいるが、なかなか上手くいかない。


〈そういや、◯◇市で青空くんと同じ名前の探索者がいたよ。すげえ、男っぽい人だったな〉


「えっ?」


 その中の一文だった。

 見逃さなかったは偶然だ。


〈そういうのってあまり良くないんじゃない?〉

〈そうそう、場所まで言うと個人情報にかかわるぞ?〉

〈それに青空くんと比べられるのも酷だろ、やめとけ笑〉

〈比較されるのツラいよなww〉


 すごい情報が入ってきて混乱。

 空返事にならないようにするのが大変でした。




「それじゃあ、今日はここまで」

「「バイバーイ」」


「……切れた?」


「うん、大丈夫よ」


「「やったーーーーーーーー!」」


 棚ぼた情報でした。

 同い年で同姓同名の探索者なら確定です。


「やっと会えるよ、うれしー。……でも、まずは謝るよ。許してもらえなくてもキチンと謝るよ」


「大丈夫よ、いい人なんでしょ?」


「……だよな。よし、明日行ってみるよ」


 ヒナタはにっこりと手をにぎり、ついていくよと言ってくれた。


 俺もありがとうの代わりに握りかえした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る