第18話 こんな所で出会うとは ①
訓練から数日間、ヒナタとスキルを磨きつつ、異世界配信も続けていた。
両方というせいか、スキルの上達は全くといったところだ。
攻撃面では期待できないが、いざとなったら影潜りがある。
焦らずゆっくりやればいい。
そして配信ではグラスウルフやワイルドバットなど、新しいモンスターを相手にし、視聴者からのコメントも上々だ。
その甲斐があって、ついにはチャンネル登録者数が50万人を突破した。
「やったな、ヒナタ。ついに大台だなんて信じられないよ」
やりはじめた頃は、俺のバトルや貧乏くさい小技が人に認められるとは思わなかった。
でも視聴者とやりとりをして分かった。
それを欲している人がいるんだって。
もちろん全員じゃないが、それを知れて力がわいてくる。
「おれさ、最近うれしいんだ。このままでいいんだって自信がついてきたよ」
「その考え、あまーーーーーーーい!」
「へっ?」
「この数字をみて。減っているのが分かるでしょ?」
突きつけられたグラフに、若干だけど落ちている箇所がある。
だけど、本当に少しだけで気にするほどでもない。思わず首を傾げてしまう。
「でたわね、それが慢心というものよ。気をつけないと、それで落ちていく配信者なんて星の数いるんだからね!」
指さしデンとかまえ勝ち誇っている。
名プロデューサーヒナタが出てきた。いつになく厳しい目つきだ。
俺は着実に固定ファンを増やしていると思っていたが、どうやらヒナタは満足していないようだ。
「モンスターの種類がかわっても、魔石採取や小技の内容が似ているのよ。これはテコいれがいる時期よ」
テコ入れって急にいわれても困るな。
物には順番ってものがあるし、派手さを求めるのはどうかと思い抗議する。
「そこを絞り出してこそプロでしょ。さあ、さあ、さあーー。いいアイデアちょーだいよーーー!」
「コ、コラ、くすぐるな。や、やめろってー!」
俺が必死に逃れるの楽しんでいる。
いいように扱われている気がしてならない。
今もパシャリとフラッシュをたいているし、なんだか手のひらで転がされているよ。
だけど、ちょっと変化はほしいかも。いい機会だし次の段階に進んでみるか。
「わ、分かったヒナタ、分かったからやめてくれ。」
「出た?」
「ああ、次の連休にさ、ちょっと遠出をしてみないか?」
「なんだか期待できそうね」
「うーん、どうだろ。たださぁ、俺らの武器なんだけど、いつまでも初期装備って訳にもいかないだろ? だからドワーフの町に行こうと思ったんだよ」
「なるほど、それいいかもね」
ドワーフは鍛冶屋の象徴でもあり、ファンタジーの代表格。
使う素材もミスリル、アダマンタイト、オリハルコン。考えただけでもワクワクする。
値段は他よりも割高だけど、物はしっかりしているし、いつかは持ちたいと思っていた。
ヒナタも上機嫌でまとわりついてくる。
「最近稼いでいるし、良いもの買っちゃおうよ」
「いやいや、彼らの作品はそんな簡単には買えないよ?」
武器リストの検索をし始めるヒナタに待ったをかける。
おあずけを喰らった犬みたいに、なんとも情けなく口を開けているよ。
「じゃあ、何をしに行くつもりなの?」
「コネ作りだよ。すごい人気だからね、お得意さんが優先されるんだ」
「え~~~~、一見さんお断りなの~?」
ほとんど死んだ目になっている。
納得のできないのもわかるよ。
気分をあげて下げてが悪かったかと反省だ。
ただこちらもマジックバッグ同様、地球からのお客の影響で更に人気がでている。
特にファンタジー金属は、マジもんの希少金属で高く少なく扱いにくい。
だから次々と大量生産とはいかないんだ。
そして、簡単に手に入らない理由はもうひとつ。
その発端は地球のA国C国の投資家のせいだ。
彼らの目的は使わず、値段があがるまでとっておく事。武器の意味をなしていない。
これに作り手の鍛冶職人はおおいに怒った。
ひとつの武器で沢山の命を救えるのに、それをしないのは許せないと。
それを最初の一人目で見抜かれ、一気に一見さんお断りが広まったんだ。
それから特に厳しくなり、信用されないと売って貰えなくなった。
使い手の腕は確かなのかとか、投資目的ではないかとか、手入れを心得ているかとかだ。
要は使えない者には売らない、それだけだ。
それを証明する手段として、あの街でクエストをこなすのが一番の近道になるんだよ。
「ということで、武器が買えるのは将来的にだよ。その前に彼らの信頼を勝ち取るのが先決さ」
「うわー、気が長い話ね」
「そうだな、町でクエストをこなして徐々にだけど、一年もあれば十分さ」
ヒナタはげんなりとしているが、そう悲観することはない。
というのも取得までをシリーズ物にし、配信すればいい。
ウケるはずさと、これを伝える。
「うーん、長編モノはダレるのよね。でも間に強烈なのを入れれば。うん、なんとかなるか」
ア、アレレ。あまり乗り気じゃないみたいだ。
日頃からインパクトがあるものが欲しいと言っているしな。
「だから、他にも何か考えてね」
「は、はい。もっと勉強しておきます」
冗談まじりのウインクで、名プロデューサーヒナタに尻を叩かれました。
だけど新しいネタといっても、あの街でのクエスト次第。
目星はついているけど、まずは行ってから考えるかな。
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