『湊かなえのことば結び』
『湊かなえのことば結び』
著者 湊かなえ
角川春樹事務所 本体一八〇〇円(税別)
淡路島にて主婦業と並行して執筆活動を行う。二〇〇七年『答えは、昼間の月』で第三十五回創作ラジオドラマ大賞受賞後、同年、『聖職者』で第二十九回小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。『聖職者』から続く連作集『告白』が二〇〇九年、第六回本屋大賞を受賞。デビュー作でのノミネート・受賞は共に史上初。二〇一〇年に映画化され、二〇一〇年度の日本映画興行収入成績で第七位を記録。書籍売上も累計三百万部を超える空前の大ベストセラーとなり、イヤミスというジャンルを世に広めた。
二〇一二年、フジテレビ系『高校入試』でテレビドラマの脚本を手掛ける。二〇一二年『望郷、海の星』で日本推理作家協会賞短編部門、二〇一六年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。二〇一八年『贖罪』がエドガー賞候補となる。二〇二一年、テレビアニメ・ルパン三世 PART6の第九話の脚本を手掛ける。
『少女』『Nのために』『夜行観覧車』『母性』『望郷』『高校入試』『豆の上で眠る』『山女日記』『物語のおわり』『絶唱』『リバース』『ポイズンドーター・ホーリーマザー』『未来』『ブロードキャスト』、エッセイ集『山猫珈琲』などの著書がある。
コロナになって「ラジオをやってみませんか?」と声をかけられて始まった、リスナーに短編小説の投稿を呼びかけて、自らの小説作法も惜しみなく語るFM大阪のラジオ番組「ことば結び」(二〇二〇年六月三日~二〇二二年三月三十日)をまとめた書籍。
リスナーに「転生する猫とわたし」をテーマにした二千字の短編小説などを書くことを提案。届いた作品を、自身がデビュー前にシナリオ投稿していた頃を思い出しながら講評した。
慣れない創作に戸惑っているリスナーには、現実のエピソードに「嘘を一つだけ混ぜて」と助言。「キラキラ光る石を上手に砂場の中に隠してください。それが現実の話から物語に昇華させる方法の一つなんじゃないかな」と語る。
どんなことを著者が語っているかといえば、秘中の秘のような、だいそれたことは書かれていない。
「決めたら最後まで書く」「『終わり』と書いたものは応募する」「書き終わったら音読する」など。至極まっとうなことを述べている。
また、「季節を取り入れるには花や音楽など、連想するものを書き出しておくといい」とある。たとえば、各月の花や音楽を予めノートに書いておき、いざ作品を作る時に季節を表す場面で、花なり音楽なりを用いて季節感を表現するということ。
「あれは四月のことだった」とするより、「ご近所さんからグリンピースを分けてもらった日のことだった」とすれば、読み手側としても具体的に想像しやすくなる。
これを用いるときは、読み手が連想できるものを考えて使わないと難しい。俳句の歳時記なども参考にできるのではと考える。
「すみません、は手抜きの言葉。すみませんに代わる言葉は絶対に存在しています(例、ありがとうございます、お陰さま、申し訳ありません。失礼します)」など。
著者の「小説の考え方」もいろいろ書かれている。
まず、カテゴリーを決めて連想するすべてを書き出す。書き終えたら一度、目を離す。次に目についたとき、それを書いていく事を考えるという。
「表現は自分で作り出す。比喩は、あるものに頼らず自分で作り出す」とある。ただし、どう考えるかまでは書かれていない。
作品に一つ、キーアイテムを入れているそうだ。現在と過去を行き来するときは、その時代のアイテムを使うという。
ラジオ番組で作品を募集し、どういう基準で選考しているかも書かれていた。候補に残しておこうがA、誤字脱字などがあって成り立っているけれど惜しいのがB、何がいいたいかわからないものをCと分類していたとある。
小説の指南書とあるけれども、どうちらかといえば違うのがわかる。ただ、著者がどのような考えをもってお話づくりをしているのかを知ることができる本なので、興味がある方には一読を勧めたい。
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