第2話
2話
◉ナガネオさんとの出会い
美容室『エクセレントヘアー』は外観からは想像できないくらい店内は広かった。
「いらっしゃいませ。お名前を記入して待ち席でお待ち下さい」
3人ほどおれより前に待ってる人がいたが、この店内の広さからしてそんなに待たされる事はなさそうだ。
ーーーー
「お待たせしました、桐谷さま。2番へご案内いたします」
ほんの10分待ったくらいで呼ばれた。
「本日はありがとうございます。桐谷さまを担当させていただきます長根尾です。よろしくお願いします」
「ナガネオさんね。よろしくお願いします」
変わった苗字だな、と思った。それと同時に、とんでもなく可愛いなとも思った。ナガネオさんは少女マンガから出てきたんですか?というくらい瞳がキラキラしてて、背が小さくて、可愛かった。でも、手を見てみると少しベテラン感が出ていた。もしかして歳上なのか?この顔で?
「ナガネオさんはこの仕事は長いんですか?」
おれは探りを入れてみた。
「そうですねー。13年になりますからそろそろベテランの仲間入りかもしれませんねー」
13年!?明らかに歳上だ。20代のおれより若く見えるが。しかし、手は正直だった。
「13年…えっと、ちなみに何歳から働いてらっしゃる?7歳くらいから奴隷のように労働してたんですか?」
「ナニソレ?私が20歳くらいに見えるって言ってくれてるんですか?ふふふ、変なお世辞の言い方をするんですね」とナガネオさんは笑った。笑うと余計に幼く見えた。歳上だなんて信じられないなあ。
「33歳ですよ。ハタチから働いてるから」
「見えないなあ」
「ありがとうございます。今日はどのくらい切りますか?これだけ長ければどんな髪型にもなれるけど」
「ナガネオさんの好みに切ってください」
ふとそんな事を口走ってた。
「へっ」
「ですから、ナガネオさんがカッコいいと思える髪型にして下さい」
長根尾さんは「ふふ」と笑って。
「桐谷さん、あなたはずいぶんと変わった人ですね。分かりました、では私好みに切ります」と言ってハサミを入れはじめた。どんな髪型になるのか楽しみである。
勘違いしないで欲しいのだが、おれはいつもこんなめんどくさい事を言うような客なわけじゃない。こんな事を言ったのはこれが初めてだ。ただ、このナガネオさんと仲良くなりたくてこの時は急にこんな事を言っていたんだ。
おれは髪型の指定をせずに全てをナガネオさんに委ねることにした。
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