カニバリズムな君と僕

ぬやみうたくひ

第1話 血

あ"~!!!また駄目だった!

仕事を1日で辞めてしまった。

何回目だろう。仕事を始めてもすぐに辞めてしまう。

高校を卒業してからもう1年経つ。ずーっと仕事は続かない。

自分って何かの病気なのかな...。

はぁ。

「死にたい。」

あ、また言ってしまった。

最近の口ぐせだな。

でも、本気で死にたいんだよな。


「ただいま~」

「おかえり、幸助。今日の仕事も駄目だった?」

「うん、お母さん、また駄目だったよ。」

二人の間に沈黙が流れる。

「まぁ、いいじゃないの!また頑張れば。」

「うん...ありがとう。」

お母さんの励ましを受け、僕は自分の部屋へ向かう。すると、チャイムが鳴った。

急いで玄関へ向かう。誰だろう。

扉を開けると...

「えっ、紅多!?」

チャイムを鳴らしたのは小学校から高校までずっと同じ学校の、親友の紅多だった。

「久しぶり」

にこっと笑う紅多。

「久しぶりだな!紅多!」

久しぶりの親友に僕はテンションが高くなってしまう。

「高校卒業してから連絡とってなかったもんな!僕はちょっと仕事に対して色々あってさ...。でも、久しぶりに会えてめっちゃ嬉しい!これからどっか遊び行く?ってか、なんで急に来たんだ?」

少し早口で話す僕にも、紅多は冷静だ。

「ちょっと話したいことがあってさ。急でごめんな。幸助の部屋、あがってもいい?」

嬉しい!久しぶりに家族と面接官以外の人と喋れる!

しかも相手は紅多だ!僕が1番信頼してる親友紅多!




「いや~、実は僕さ、仕事が続かなくて...半分ニートみたいなもんなんだよね。こういうこと、紅多に相談しとけばよかったよ。」

「そうだったんだね。俺は今市役所で働いてるよ。」

二人で部屋に入り、お互いの今おかれている状況を確認しあった。

「すごいな~。どんな仕事も僕は続かないんだよな...。やっぱ僕って病気なのかな...。」

「幸助、今、死にたいとか思ってないか?」

「えっ、なんでわかるんだよ。」

すると紅多はこう言った。

「なぁ幸助、俺、お前のこと食べたいんだ。」

...???僕は死にたいと思ってるのを当てられた理由を聞いたんだけど...。

「俺、ずっと幸助のことが好きだった。その感情にいつも、食べたいっていう思いもくっついてきた。性的な比喩じゃない。俺はお前の肉が食べたい。」

好き?紅多が僕のことを好き?

それと...はっ?肉?僕の肉?

「紅多は、えっと...」

言葉につまる。

「僕の肉を食べたいの?」

すると紅多は僕をベッドへ押し倒し、僕の首筋へ噛みついた。

イッタ!!!絶対血が出てる!

「ごめん幸助...。これでも、我慢してる方なんだぜ。」

そして僕の傷口へキスをし、僕の血を嘗めた。

「幸助...。お願いがあるんだ。今度から定期的にお前の血を嘗めさせてくれないか?」

刺激的すぎるその言葉に僕は少しめまいがした。

「えっと...」

僕が言葉につまっていると、紅多はこう続けた。

「1回につき1万円あげるから。」

うっ!半分無職の俺にそれは大きすぎる!

「紅多...わかった!週に1回、僕の血をあげる!」

こうして僕たちはそう約束し、紅多は帰っていった。

しかしびっくりした。紅多が僕のことを好きで、僕の肉を食べたいと思っていたなんて。

まあいっか。ほぼ無職の僕よりは紅多の性癖の方がマシ。

それに、血をあげるくらいなんてことない。簡単だ。カッターも持ってるし、サクッとやればそんなに痛くないだろ。



このときの僕は知らなかったんだ。紅多の誕生日に、僕の足の指をあげることになるなんて。

















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