困惑

狐の仮面に皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるだろうか。

恐怖?困惑?それとも興味? 私はその時は困惑でしかなかった。

誰かに呼ばれたことですら不思議なのに狐の面を被った男に呼ばれることなんて人生で数えれるくらいだろう。

「こちらにお越しいただけませんか?」

狐面を被った男が喋り、私の考えていることに割り込みのように入ってきた。

ここで狐面を外させるか、それとも信用してそのまま付いていくか。私は前者を選んだ。

「先に仮面を外してもらえますか?」

私はその男にそう説いた。

「ここで外すと私にとってもあなたにとっても損になることが起こり得ます。」

とても敬語が使い慣れているように思えた。私もその男の話を容認し、ついていくことにした。


みなさんは口約束をしたことがあるだろうか。

口約束は信用情報には使用しない。これは社会的常識あたりまえと言えるのではないだろうか。

しかも、口約束なんてすぐ忘れる。そんな約束で大丈夫なのだろうか。私はわざと口約束を使う。

まぁ、友好関係が成立している場合のみだが、口約束の信用も口約束の失効も両方、友好関係があることが重要である。

例えば、「今から行く。」

これは友情関係がある場合なら嘘でも相手を安心させるためであると考えれればそれはどうでもいいことである。

ただこれが社会であったらどうだろう。

相手は激怒である。これは社会の場合、安心ではなく業務的に考えなければいけないからだ。


ついて行ったら、ある部屋に着いた。どうしてこんなところに来たのだろうか。私に性的暴力を振るうつもりなのだろう。

目を閉じて防御体制になりながら私は男に質問をした。

「ここでなら仮面を外せるんじゃないですか?」

今の主権は私にあるのだろう。そう考えると敬語を使わずに問いかけた。そう私は思ったのだ。

「ええ、ここでなら。」

その男は狐の面を外すと床に音を立てずに置いた。

教室で見かけた顔だ。

佐々木望ささきのぞむ。教室で女子に囲まれていた男だ。

彼との接点は園の頃以来全くを持ってなかった。小学校も、中学校も同じ所に行っていたのにだ。

彼は園を卒業した後は女子に囲まれていたからだ。

彼の優しそうな笑顔、寛容な心。そして、かっこいい顔。他の女子は彼を恋愛対象すきとして見ているのだろう。

彼は告白された時はワンパターンな返答だった。

「思いを馳せている方がいる。」

例えどんな人でもだった。彼の「思い馳せている方」という話にクラスの女子たちは全員争いになった。なぜ私以外の女子が彼を取り合うのか。

全員、彼をアクセサリーだと思いこんでいるのだろう。

自分の近くにいれば自分か位置が上がる。相対的に下がるのが普通の考え方なのだろうが。

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