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Rotten flower

起床

朝、目が覚める。

カーテンが風に吹かれ揺れていること、花についている水滴が輝いているのがひと目でわかる。

きっと寝落ちをしたのだろう。スマホが顔の真横に落ちてきている。

カーテンを開け、日の光を浴びる。スマホの画面にはただただ「6:00」が表示されている。

それにしてもこれよりいい壁紙は無かったのだろうか。とてもブレている。


私の名前は黒木くろきはな。所謂陰キャラというやつだ。

いつものように教室で誰とも話さずに過ごす。それが一番幸せなのだから。

実際はクラスの中心にいる陽キャラが羨ましいけど……


扉を開ける。一歩踏み出す。もう一歩踏み出す。他の人なら挨拶をするだろうが誰とも関係性をもっていない私は誰にも何も言われない。

「おはよう。」

後ろの扉から入ってきた人気者ようきゃらに全員が釘付け。

彼は今まで何度も告白されたけど全て降った、クラスの男子から付けられたあだ名は「乙女ゲーの最高難易度」らしい。

乙女ゲーはやったことないが何度か動画サイトで見たことはある。


読書というものは非常に集中できる。ページ数で進捗を確認でき、栞で中断できる。そして、Web小説と違うのは電気がなくても読めることだろう。ページを捲る音もいい。私は本の読書が大好きだ。

渡辺峰さんの『Let "O" say』全329ページ。

社会不適合者である主人公がある一人の女性と出会い社会に馴染んでいく物語だ。この本は近所の書店で見かけ、興味をそそられた。中身は作家の書き方がよく出ているように感じる。

倒置法が程よく使われており読仮名ルビの使い方も凝っている。こんな作家を発掘した花吹文庫もすごいだろう。


「聞いてる?」

誰かが話を無視しているのだろうか。友だちがいるだけ幸運なのにそんな話を無視するとは非常に人間関係に疎いのか飽きているのかそのどちらかなのだろう。

読書の邪魔なのだ。どうにか声量は少なめで話してほしいのだが。


「ねぇ。」

なぜ気づかないのだろうか。

かなり近く。かなり大声で呼びかけているようだ。

何かに夢中なのか。それとも無視しているのか。友情というものをちゃんと考えるのが友達なのではないだろうか。それは他人ひと事なのでわからない。


「華さん?」

華というやつ……私じゃないか?

そういえばさっきからかなり近くだった気がする。私が呼ばれていたのか。何と返事をしようか。

というかなぜ私が呼ばれているのだろうか。

先生からの呼び出しだとしたら最近何かやらかした?

いや、最近は何事もなく迷惑をかけずに生活してきたはずである。とりあえず、先生だと考えてどのように対応するか……

「私、何か課題を提出し忘れていました?」

私は後ろを振り向いた。狐の面を被っている男性が一人。身長は私よりも数センチぐらい大きい程度だった。

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