第9話「キッドの償い」
キッドは下唇を噛み締め首を横に振った。
「確かに僕は、あなたを恨んでいました。でも、殺したいとは思いません。
タツヤ様から聞きました。あなたが僕を大悪魔フェゴール様に引き渡した後、
ずっと悔やみ、心を痛めていたとそれだけでもう、十分です。
フェゴール様にはなんとか、タツヤ様を殺さなくても風花さんを助けてくれるよう、頼んでみます。それでは」
とにっこりと、微笑むと赤い翼を広げ、飛び立とうとした。
その時、『裏切り者に死を!!』どこからともなく、邪悪な声が聴こえた。
「フェゴール様!!」
キッドは真っ青になり、ぶるぶると震えだした。
ヒュン!ドス!
何と、空から一振りの剣が飛んできて、キッドの胸を貫いた。
「うあっ」
キッドは悲痛に短く叫ぶと、どうと地面に倒れた。
「キッド君!!」
「キッド!!」
「キッド!!」
3人は血相を変えると、キッドに駆け寄りタツヤが刺さって
いる剣を抜き、「しっかりしろ!キッド!!」と、キッドを抱き起こした。
「いやああっ!キッド君、死なないで!!」
風花が泣きながらキッドにすがる。
キッドの胸からドクドクと、真っ赤な血が流れ出している。
キッドは口から血を流しながらつぶやいた。
「泣かないで? 風花さん。
僕は
やはり、フェゴール様は僕をお許しになられなかった。
そういう方なんです。あの方は、ああ、もう目が見えなくなってきた。
死ぬのですね僕は。せめて、死ぬ前にガブリエル様を母さんと呼びたかった」
風花が涙を流しながらキッドに言った。
「呼べますよ!キッド君。これからいくらでも!
だから、お願い死なないで!!」
ガブリエルは厳しい表情で言った。
「これから、キッドにわたくしの天力を注ぎ、救います! 決して死なせはしません。
わたくしの大切な息子を悪魔などの思い通りになど、させません!!
手伝いなさい。タツヤ」
「分かったぜ! おふくろ!!」
タツヤはうなずき、身体に天力をみなぎらせ
ると、ガブリエルと共に天力をキッドに注ぎ始めた。
風花は見守りながら、必死に祈った。その結果、キッドは回復し、一命を取り留めた。
そして、キッドの赤い翼が光り輝き,純白の翼に変わったのである。
「これは、一体?」とキッドが驚いていると、
ガブリエルが優しく微笑み
「あなたはわたくしと、タツヤの天力により天使に戻ったのです」
キッドは血相を変えた。
「そっ、そんな! そんな事をすれば、あなた様と
タツヤ様にフェゴール様が何をするか分からないのに、何てことを!!」と言うと、
「わたくしも、タツヤもフェゴールごときに
易々とやられるほど、弱くはありませんよ?
それに、わたくしは愛しいあなたのためなら
どんなことでも、乗り越えてみせます。
今まで辛かったわね。もう、大丈夫。
あなたには、母さんが付いているわ……安心なさい」
キッドの額にキスをすると、キッドは瞳から涙をあふれさせ
「うわああっ、母さぁああんっっ!」
キッドは、大声で泣きながらガブリエルの胸に顔をうずめた。
風花もタツヤももらい泣きをした。
その後、悪魔の契約を破棄するため魔界にフェゴールをタツヤと、
ガブリエルと共に倒しに行く事になった。
キッドは風花を抱きしめながら言った。
「風花さん。僕はこれから、魔界へフェゴール様。いえ、フェゴールを倒しに行きます!
僕は、必ず生きて戻ってきます。その時は僕の想いをあなたに伝えたいのです」
風花は泣きながらうなずき。
「はい、キッド君。その時はあなたの想い、聞かせて頂きます。ですから、生きて戻ってきてくださいね」
キッドは優しく微笑みうなずくと、タツヤとガブリエルと共に光り輝く魔法陣に消えた。
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ここまでお読みいただきありがとうございました。次は最終話です。
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