第8話「キューピットタツヤ対堕天使キッドの戦い」
キッドは焦った。
「そ、それは光の弓、アポロ!まさか、あなたが持っていたとは」
タツヤは静かに語り始めた。
「おふくろにお前の事はいつも、聞いていたよ……
おふくろはいつも、後悔して自分を責めていた。
おふくろは、お前を捨てたんじゃねぇ。大悪魔にお前を捨てなければ、
お前を殺すと脅されて、仕方なく捨てさせられたんだ。
その頃おふくろは、今のように力のある天使じゃなかった。
従うしか、お前の命を救う術がなかったんだよ!」
「そんな! それじゃあ、僕は何のためにフェゴール様に従って、
堕天使になったのですか!?」
力が抜け、地面に膝を付くキッド。
「利用されたんだよ、お前は。ほら、立てキッド!今なら笑って、許してやっからよ!」
とタツヤは、微笑み手を差し伸べると、
パシン!
何と、キッドはタツヤの手を払いのけた。
「――遅いですよ。もう、僕は堕天使になり、
フェゴール様に付き従い、非道の限りを尽くしてきました!
この身は、罪で穢れてしまったんですよ。堕ちる所まで堕ちてしまった、
僕に救いはない。フェゴール様からの命令なんです。タツヤ様の抹殺は……
逆らう事など出来ません!逆らえば、僕の愛する風花さんが、殺されてしまうんです!
死んで下さい。タツヤ様!! 出でよ。闇の弓、ヨウカハイネン!!」
キッドが叫び、自分の赤い翼から羽根を一本抜き取ると、
羽根は赤く輝く、まがまがしい洋弓になった。
キッドは、タツヤに向かって赤い光の矢を放った。タツヤはチッと舌打ちし、
「迎え撃て! アポロの矢!!」
光の矢をキッドに向け撃った。
その時何と、風花が2人の間に飛び出してきた。
「やめてぇえええっっ!!!」
「風花!」
「風花さん!」
2人は血相を変えて叫んだ。風花、絶体絶命のその時。
「おやめなさい! タツヤ、キッド!!!」
何と、風花にキューピットの矢を売った老婆が突然現れ、風花をかばった。
「お婆さん!? 危ない!!」血相を変え驚く風花。
その老婆の姿が見る見る変化し、白髪はウェーブがかったロングの金髪に、
瞳は青い目に、見目麗しい大きな白い翼を持つ、天使の姿へと変化した。
「てっ、天使!!?」
突然の老婆の変化に、唖然とする風花。
天使が両手から光を放つと、風花に迫っていた光の矢はかき消えた。
「あなた様は、大天使ガブリエル様!」
キッドが、呆然としながら言うとタツヤは、小さく口をとがらせ。
「ちっ、おせーよ! おふくろ」と言うと、
ガブリエルは眉を吊り上げ、タツヤの頬をつねった。
「タツヤ! あなたは、女の子に何かあったら。どうするつもりだったのですか!?」
すると、タツヤはムスッとして。
「うっぜぇよ!助かったんだから、いいじゃねぇか!」
ガブリエルは風花に向き直り
「ごめんなさいね、風花ちゃん。わたくしの育て方が良くなかったのね。
こんなわがままに育ってしまって、迷惑かけてない?」
「はい。大丈夫ですよ」と苦笑した。その時、
「ガブリエル様、お久しぶりです」
キッドがガブリエルにひざまずき、頭を下げた。
ガブリエルは、キッドを見て悲しげな表情を浮かべ。
「キッド、大きくなりましたね。あなたは、わたくしのせいで堕天使となった。
さぞかし、わたくしを恨んでいる事でしょうね。ごめんなさい。
謝っても、謝り足りないくらいです。でもどうか、わたくしの息子を殺さないでください。 代わりに、わたくしの魂を差し上げましょう。それなりの価値はあるはずです。さあ、わたくしを殺しなさい。キッド……それが、せめてものわたくしの
あなたへの罪滅ぼしなのですから」
大天使ガブリエルイメージイラスト
https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093081574331465
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
あと、二話で完結です。
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