第7話「堕天使」

 謎の青年天使イメージイラスト

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 ここは桜野公園。風花は身体がぽかぽかと、暖かくて楽になるような感覚を覚えていた。

 そして、唇には柔らかなものが当たる感触。

 身に覚えのあるその感触に風花は驚いて思わず、瞳を開けた。


 すると、あの夢の中で見た少年が自分を抱きしめキスをしていた。

 風花は恥ずかしくなって顔を真っ赤に染めると、少年の服を掴んだ。



 少年はそれに気がつくと、名残惜しそうに唇を離した。

「おや? 気がつかれましたか。

 どうやら、熱は下がったようですね。良かった」


 どうやらこの少年が風花の熱を下げてくれたようだ。

「あなたが助けてくださったのですか、ありがとうございます。その不思議な力。

 その翼は、あなたもキューピットなのですか?」



 少年の肩の上の仔猫が風花に飛びついてきた。

「きゃっ? この猫ちゃんは・・・…もしかして、あなたは」

 言い掛けると、「何をしている…風花から離れろ! キッド!!」キッドと呼ばれた

 その少年はニヤリと笑い振り向いた。タツヤが息を切らし立っていた。

「おや、お待ちしていましたよ。タツヤ様」

「キッド? やっぱり、キッド君だったんですね。でも、どうして・・・その姿は一体?」



 タツヤはキッドを睨みつけながら

「キッドの本来の姿は、あんなガキの姿じゃねえ。

 この姿が本当の姿だ。それにキューピット、天使でもねえ!

 こいつは悪魔の一種、堕天使だてんしなんだよ!だから、風花に近づけたくなかった。

 堕天使は生物の精気を吸って、糧としているんだ!

 お前の目的は一体、何だ!!」と叫ぶ。



 キッドは冷たくクスクスと笑い。

「さすがはタツヤ様。お見事です! そこまで気がついていたとは。

 そしてさすが、あの方の御子息といったところでしょうか?

 でも、安心してください。風花さんの精気は、吸っていませんから。

 僕はあなたの命が欲しいのですよ!」と言うと、


 仔猫がタツヤに近寄ってきた。仔猫はメキャメキャと、

 生々しい音をたてて醜い悪魔の姿へと変化した。



「ちぃっ! やはり、こいつ悪魔だったか!!」

 タツヤは軽い身のこなしで飛びのいた。

「キャアア! 猫ちゃんが!」

 恐ろしくて悲鳴を上げる風花。

 キッドは冷酷に笑い「アハハッ! 僕の使い魔のキュパバスです。

 こいつは天使が好物でしてね。大人しく喰われてください!タツヤ様!!」と、叫ぶ。

 悪魔は『ギュアアア』と、奇声を発すると

 鋭い鍵爪と牙を光らせタツヤに襲い掛かってきた。



 タツヤの服が悪魔の爪で切り裂かれ、真っ赤な血が流れる。

 タツヤも負けじと手のひらから光弾を

 発射させ、悪魔にぶつける。悪魔が叫び声を上げ、タツヤの腕に噛み付く。

「うああっ!!」


 タツヤは思わず悲鳴を上げた。

「いやああっ! やめてっ! やめさせてください。

 キッド君! どうして!? どうして、タツヤさんにこんなことするんですか。

 何か、恨みでもあるんですか!?」



 キッドにすがると、キッドは悲しげな表情で

 風花を見詰め「ありますよ、恨み。孤児だった僕はタツヤ様の母親に幼い頃、

 一度拾われ、その後、捨てられたんですよ……

 それからあの方はタツヤ様だけを

 可愛がるようになり、僕は闇に身を落とし、

 大悪魔フェゴール様に拾われ、堕天使となりました!これでは恨みたくなくても

 恨まずにはいられないでしょう!!」



「そんな」唖然とする風花。

「ちっ・・・…ほとんど、逆恨みじゃねえか! そんなもんでやられてたまるかよ」

 悪魔の爪を受け止めながら、タツヤが語気荒く叫んだ。


 キッドは憤怒の表情を浮かべた。

「うるさい! あなたに僕の気持ちが、わかってたまるか!!

 あの方の愛情を一身に受け、育ってきた。

 あなたに僕の孤独と、絶望と悲しみが理解できますか!?

 やれ! キュパバス!!」



 悪魔はタツヤに再び襲い掛かってきた。

 タツヤは目を鋭く細めると、自分の翼の羽根を一本抜いた。

「ちっ、しょうがねぇ。出来ればキッド相手に使いたくなかったが。

 出でよ!アポロの弓!!」と叫ぶと、


 羽根は白く輝く洋弓に変化した。タツヤは光の矢を悪魔に向かって放った。

 光の矢が悪魔を貫いた。

『ギュアアアアアア!!!』

 悪魔キュパバスは一瞬にして弾け飛んだ。


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 ここまでお読みいただきありがとうございました。

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