2:女神がやってきた
ピンポーン
ルルが母から出された課題をやっていると、突然チャイムが鳴った。母は洗濯の最中だったのでルルが対応することにした。
「はーい」
ルルはドアを開けた。
「来たわよ」
そこには女神アリスが腕を組んで立っていた。ルルは無言でドアを閉め、ついでに鍵をかけた。
「こら、開けなさいよ!!」
激しくドアを叩いて抗議するアリス。
「勧誘なら間に合ってます」
「誰が勧誘よ!!」
「あら、ルルちゃん、どうしたの?」
洗濯を終えた母が玄関で慌てふためいているルルを見て首を傾げる。
「あ、ママ!早くケーサツ呼んで!女神を騙る悪い人が――」
「それじゃあ、ママ行ってくるから、アリスちゃんと仲良くね」
女神と入れ違いで母は出かけて行った。
「なんであんたがここに来るのよ?」
リビングで紅茶を飲むアリスを心底嫌そうな顔で睨む。
「アナタのお母さんと約束したからよ」
それは昨晩のことだった。スカーレット家に久々に大きな依頼が入ったそうだ。いつもなら父と母とハナのうち二人だけを仕事に回して、残った1人がルルのお世話ということになっていたのだが、どうしても三人じゃないと片づけられない仕事だったらしい。まだ幼いルルを留守番させることも、かといって連れて行くわけにもいかず頭を抱えていたところ「何かお困り?」と突如女神が降臨。あれよあれよという間にルルのベビーシッターをやることに。父とハナは恐れおののき跪いていたが、母だけは「よろしくねアリスちゃん」と笑顔で手を握っていたらしい。
その話を聞いて「ママつおい」とぼやきながら、ルルはため息をついた。
「まぁ、アナタにチートの解放と、力の使い方も兼ねて、ね」
「あーさいですか」
頬杖をつくルルに向かってデコピンをするアリス。「ふぎゃ」っと声を上げ椅子のまま後ろに倒れる。その瞬間、とてつもない力が流れ込んでくるのを感じた。
「ふぉおおおおおお」
おでこと後頭部を押さえ悶絶するルル。
「はい、これで完了っと。ステータスを確認してちょうだい」
「す、ステータスオープン…」
名前:ルルティエ・スカーレット
年齢:5歳
種族:女神の眷属
職業:勇者
称号:「転生者」、「スカーレット家長女」、「女神の保護」
「なにこれ?」
虚空に映し出されたステータス画面はとてもシンプルなものだった。
「アタシが考え抜いた最強のチートよ、感謝しなさい」
「いや、人間じゃなくなってるんですけど」
「当然でしょ、アタシの眷属になったんだから。ほぼ神よ」
「ていうか女神の保護って何?加護じゃなくて?」
「ベビーシッターしてるからかしら?」
そう言って盛大に噴き出すアリス。
「もう頭きた!チートさえもらえればこっちのものよ!あんたなんかぶっ飛ばして――」
飛び上がり勢いよくアリスに殴りかかる。しかしアリスにその拳が当たる直前で体が痺れて動かなくなってしまった。
「馬鹿ね。
「ちっくしょおおおおお」
泣きべそをかきながらその場で地団太を踏むルル。
「まぁ、今日からその力の使い方、アタシがみっちりと教えてあげるから」
ニヤリと黒い笑みを浮かべながら、アリスはルルを小脇に抱えて外へと出て行った。
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