第13話さらりさらん

二学期が始まって彼方さらりは僕らのクラスに所属することが決まった。

「彼方さんは何部に入るの?ってかこの学校に転校してきたのなら何かしらの部活には入ったほうが良いよ」

早速女子生徒が嫌な絡み方をしに行く中、彼女はどこ吹く風と言った体で首を左右に振る。

「放課後はやることがあるので部活動には所属しません」

さらりはしっかりと断りの言葉を口にするのだが女子生徒も引いたりしない。

「この学校では部活に入っている生徒の方が有利なんだよ。彼方さんのこと思って忠告しているんだけどな〜」

「いえ。結構です。私の人生は高校生活で終わるようなものではないので。ここで立場が有利であったとして将来何の意味もないですし。そんなことで私の価値まで決めつけてくるような風潮は気に入りません。それに私には居場所がありますし」

さらりは強気な言葉を口にして女子生徒は少しだけ苦々しい表情を浮かべた。

僕は何となく教室全体を見渡していたのだが、みやこも少しだけ苦々しい表情を浮かべており、しずかはどこ吹く風の様子だった。

「それでは。私は図書室に用があるので。失礼します」

さらりは椅子から立ち上がるとそのまま図書室を目指そうとする。

とは言え一限目が始まるのも時間の問題だった。

そこに予鈴のチャイムが鳴りさらりは残念そうに椅子に座り直す。

何とも言えない二学期の始まりに今後の不穏さを物語っているようだと思った。


無事に午前の授業が終了するとさらりは図書室を目指していた。

本日の昼休みの図書当番は僕と古川だったので二人して図書室に向かう。

図書室の受付で昼食を取りながらあまり生徒の居ない場所で仕事に努めた。

そこにはさらりの姿もあり彼女は本を読み漁っていた。

何冊かの本を手にすると彼女は受付に持ってくる。

「貸出お願いします」

それに対応していると彼女は以前借りた本をこちらに差し出してくる。

「これは返却で」

同時に作業を進めると彼女に本を渡す。

「どうぞ」

さらりは本を受け取るとその場に少しだけ居座った。

「ちょっといいですか」

そんな枕詞から話は始まった。

僕らはさらりに目を向けると話を聞く態勢を取る。

「部活に入っている方が有利ってどういう意味ですか?」

「それは…」

そうして僕らは我が校のよくわからない風潮を話してきかせる。

「なるほどですね。私には関係なさそうなので良かったです」

「でもさっきみたいなのはやめたほうが良いぜ?女子を敵に回すと面倒だぞ」

古川は忠告のようなものをさらりにすると彼女は不敵に微笑んだ。

「大丈夫ですよ。何もされたりしませんから。というかさせませんし」

さらりは強気な言葉を口にして以前会ったときとはイメージが変わったような気がした。

もっと大人しい人物だと思っていたのだが…。

意外と強気な人物らしい。

さらりのことを何も知りはしないが何となくそう思ったのだ。

「とにかく教えてくれてありがとうございます。それでは」

彼女はそれだけ言い残すと図書室を後にした。

古川は何かを思い出そうとしているようで頭を悩ませていた。

「なんかどっかで聞いたことある声じゃないか?」

「ん?何が?」

「彼方さんの声。聞き覚えあるんだよな」

それに頭を悩ませるのだが僕には検討もつかずに首を左右に振った。

「わかんないな。有名人とか?」

「可能性はある。どっかで聞いたんだよな…どこだっけな」

古川は昼休み中そのことに頭を悩ませていたが答えには辿り着けなかったらしい。


本日の授業が全て終了するとしずかは僕のもとを訪れる。

「今日は委員会なんだ。また空いている日に遊ぼうね?」

それに頷いて応えるとしずかに別れを告げる。

そして本日は大人しく帰宅すると自室でスマホを操作していた。

動画配信サイトを視聴して適当に時間を潰していると何処かで聞いた声が聞こえてくる。

「さらん。転校したんだけど。その学校が変でさぁ〜…」

その何とも言えない特徴的な声を耳にして何処か違和感を覚える。

(何処かで聞いたような…)

僕も昼休みの時の古川のような現象に陥る。

だが答えには辿り着けずに本日は何事もないように時間が過ぎていくのであった。

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